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カテゴリ:読書
押切蓮介「ミスミソウ」第2巻をようやく入手……。
相変わらずの鬱展開ですが、それでもページを繰る手が止まってくれない。 ――――――― クラスメイトによるイジメを受けていた主人公・野咲春花。 これまで半ば沈黙を守っていた彼女だったが、ついに家族を焼き殺した者たちに対して復讐を開始する。 鉄パイプで殴り、ハサミで切り裂き、ナイフで抉り、ボウガンで射抜く。 相手がいくら命乞いをしても何ら意に介する事はない。 ただひたすらに、淡々と殺しを繰り返す……。 2巻では、春花は「狩られる側」から「狩る側」へと急激な変貌を遂げている。 その行動に一切の容赦は感じられず、感情すらもほとんど見せない。 本来、虐げられていた者が復讐に立ち上がる時、その物語を見る者は大きなカタルシスを得るはずだ。 しかし、「ミスミソウ」においてはそうした印象を感じる事ができない。 陰惨なのだ。あまりにも、何もかもが。 「目的は手段を正当化する」と言ったのは誰だったか、少なくとも「正義」に基づいた復讐ならば共感する事はできる。だが、確かにそこに一片の正当性はあるにせよ、その先に待っているのは確かな破滅……それが春花の復讐であるような気がする。 全体を見て改めて思ったのは、やはりこの漫画において各キャラクターは「異常」だと言うこと、そして、各々が抱える怒り、鬱憤、劣等感、あるいは恋愛感情……それらが複雑に絡み合い、もはや後戻りする事の叶わないカタストロフへと走り始めている。 イジメに参加する事で厭うていた自らの生に意義を見出す者。 最期の瞬間まで異分子である春花に対して集団の秩序を壊した責任を転嫁する者。 歪んだ愛情ゆえに春花を殺そうとする者。 一人一人が抱えている苦悩それ自体は、所詮はただ「個人」に収斂されるべきものであったのかもしれない。しかし物語の舞台となっている田舎の中学校においては、集団であるがための狂気とでも言おうか、それぞれが抱えている苦悩が加害者・被害者共に関係なく向けられ、限りも無く増殖し始める。 そして狂気が生まれる。廃校寸前で生徒数十数名という状況では尚更ではないだろうか。 人数が少なければ少ないほど、彼らの「関係」はより濃密なものになっていくのだ。 それにしても、久賀の言う「あの女が俺たちのバランスを壊した」とは明らかに的外れである。 彼らは春花がやってくるより以前(1巻で既に描かれているが)、佐山をイジメの標的にしていたのだ。内部の異分子を意図的に敵対者へと仕立て上げて連帯を図ろうとする限りバランスは維持されていた事であろうが、彼らは放火によって一線を越えてしまった。 どだい表面に出ていない内部矛盾を多数抱えていた時点で、どこかに亀裂の生じやすいポイントがあったのかもしれない。 春花の家族を焼き殺した火炎は、彼らの秩序が立つ薄氷をも溶かしてしまったのである。 春花もまた、薄氷の秩序を自ら壊すほどの憎しみから狂気に取り憑かれたのかもしれなかったが、晄との会話で今まで殺してきた者たちの凄惨な死に様、さらに実妹の姿を思い出す。 そして、二人は雪の中で抱き合いキスを交わす、の、だった、が……。 小黒曰く、相場晄は「とんでもない変態」「歪んだ愛情」「本人は気づいてない」という。 春花は、狂った秩序の中でようやく見つけた安息までも失ってしまうのだろうか? 全ては次なる破局に向けての準備段階でしかないという事なのか? そして影で胎動し始める「佐山流美」という新たな狂気。 第3巻の発売が待ち遠しくてたまらない―――。 (グロテスクなので見せられないよ☆) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.09.15 23:24:32
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