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tartaros  ―タルタロス―

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2008.10.11
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カテゴリ:読書
長いけど引用。


そして、この平等ということは、すべての人が銘々自分の私有財産を持っている限り、決して行わるべくもないと私は考えています。いろいろな権利や口実を設けては出来るだけ多くのものよせ集め掻き集め、ありとあらゆる富は少数の者たちだけで山分けにする、そういった国ではいくら豊富に貯えがあっても、少数の者以外の者にはただ欠乏と貧窮が残されているばかりです。しかも多くの場合、この後者の貧乏人の方が前者すなわち金持などよりも、いっそう幸福な生活を楽しむ権利があるのです。なぜかと申しますと、金持は貪欲で陰険で非生産的でありますが、貧乏人は謙虚で純情で日々労働によって自分の利益そのものよりもむしろ全体の福祉に多大の貢献をしているからです。
 こういうわけで、私有財産権が追放されない限り、ものの平等かつ公平な分配は行われがたく、完全な幸福もわれわれの間に確立しがたい、ということを私は深く信じて疑いません。……(後略)

トマス・モア「ユートピア」第一巻 国家の最善の状態についてのラファエル・ヒスロディの物語 62p~63p



この後の章では、ユートピアの住民は全員が必ず農業に携わっている・全ての財産は万民に共有されており、誰も私有財産を持っていないと紹介されている。

つまり共産主義ですね、わかります。



共産主義かどうかはともかく、まだまだ富が少数者=王侯貴族の占有物であった時代の産物なのか、この思想は。
カルヴィニズムが蓄財と利潤追求に宗教的正当性を与えるより以前、資本家と労働者の間に海よりも深い埋めがたい溝が誕生する前……つまりはまだ近代的資本主義が本格的に産声を上げていない時代?(マックス・ウェーバーの考えに従えば)。
でも似たような思想って共産主義に限らず結構いろんな所で見かけるような気が。
日本でも安藤昌益とか細井和喜蔵とか居たような記憶がある(まあ、それ以外に知らないんですけど……)。
共通点としては全ての人々に平等に労働を課しているところか。


国家が「王の国家」から「人民の国家」へと変遷していく、その最初期の思想の姿がこの「ユートピア」と言える……?





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Last updated  2008.10.11 23:16:14
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