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tartaros  ―タルタロス―

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こうず2608

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2008.10.14
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カテゴリ:小説紛い
 確かに―――確かに朝がやって来て、それで目を覚ましたはずだと思ったのだけれど、彼が見たものは燭光に取り込まれて輝く見慣れた自室の白い天井ではなく、どこまでも切れ目の無い一面に真っ黒い空間だった。
 ……否、「空間」という表現はいかにも適切さを欠いている。彼はただ暗闇の中に居た。暗闇という捉え所の無い塊の中で、ただ呆然と地面に寝転がったままに、首から上だけを動かして辺りの様子を視認しようと試みていたのだ。けれども、寝起きでぼんやりと霧がかかったようになっている彼の思考においては、その状況を合理的に解釈するということは適わなかった。ただひたすらに、自分自身が何処とも知れない暗闇の中に横たわっているという事実を確認するだけに過ぎなかった。
 それは虚しい努力である。けれども、そのまま横たわっているのでは、体の周りだけでなく内から湧き上がる薄ぼんやりとした疑念の暗闇を払うことなどできそうもなかったからそうしたのだ。徒労に終わるというのはあらかじめ、かなりの部分で彼自身、予想していたのだけれども、それでも、今現在の自分が置かれた状況を確認するというただ一点においては非常に有意義だったと言えるだろう。
 さて…事ここに至って彼の頭もようやく冴えてきた! まだ意識が現実と夢の境をふらふらと漂っていた寝ぼけ眼を擦りながら、彼はその日はじめて、ようやく半身を起こしたのだった。
 どこだろう……ここは?
 それは、彼でなくても誰もが持ち得る疑問であるだろう。
 確かに彼は昨晩、いつもの通りに風呂に入り、いつもの通りに、就寝前の読書を少しだけし、いつもの通りに電気を消して、いつもの通りに眠りについた。それだけの、たったそれだけの事なのだ。であるにも関わらず、なぜ自分が今こんな見たことも無いような、ただただ暗く黒く、粘液のように身体に染み込んでくるとも思える闇の中に放り出されているのか。それは、彼にとっては皆目検討のつかない事だった。やはり、彼でなくても同じ疑問を誰もが持ち得るだろう。
 突然こんな訳の解らない状況に陥っているのだから当たり前だが、彼自身の意識は既に覚醒を迎えているにも関わらず、もう一つの声が彼に「これは夢である」と囁き掛けていた。曰く、こうなのだ。
 ―――こんな馬鹿げたことってありますカ?
 ―――君がこんな所で眠っている謂れは無いでしょウ?
 ―――君の夢想の産物ですヨ……そうですヨ。
 もう一人の彼は、確実に、この状況が夢であることを認識させようとしていた。これが夢であって欲しいと志向していた。合理的な解釈ができないのであれば、もう、これは「夢」だと決め込んでしまえば良いではないか。むしろ、その考えこそが最も合理的な解釈。そうすれば、目が覚めるまで、再びの一眠り……。
 そもそも、彼は何も解ってはいないし、判ってもいない。ただそこに居るのを自覚しているだけだ。だからこうした現実をただ視認する心と、逃げの心情だけが前面に出るのだ。 
けれども、彼はまさに決然として立ち上がった。光さえあって彼の顔が見えるのならば、その面持ちは「英雄的」とでも称すべきであっただろう。これから行う試みを改めてよく吟味すると、この「英雄的」なる表現は的外れで滑稽かもしれないが、追い詰められて後が無くなった者にも似た心情で、彼は瞬間に頭の中で思い描いた行動に移った。
 彼はすっくと立ち上がると、自分には二本の脚が在るのだ、という事を知った。感覚はあった。しかし、光の無い状態では、もしかしたらそれが錯覚かも知れないという奇妙な恐れもあった。股関節……腿……ふくらはぎ……と触っていくうちに、彼はようやく二本の腕が備わっている事にも気が付いた。
「何だ、あるじゃないか。手も、足も!」
 我知らず、内から歓喜の声が発された。平生ならばそんな言葉など彼の口からは出なかったかもしれない。この暗闇で目覚める前の彼は、少なくともそうだった。だが、闇に視覚を封じられてしまっていた彼にとっては、この上も無き悦びだったのだ。それと同時に声が出る事を知った。口蓋をなぞる舌が在る事を知った。カチカチと打ち合わされる上下の歯が生えている事を知った。口が在る事を知った。顎が在る事を知った。声を聞き取る耳が在る事を知った。そうして、それらの各部を繋ぎ合わせる胴体と首がある事を知った。
 何より――。
 彼は、彼である事を知った。
 何も見えない場所で、有るのか――同時に「在るのか」――無いのかが判らないままになっていた一人の人間未満が、人間である事を思い出したようだ。肉のうねり、骨の軋み、筋の張り。全身がただ虚無の中に浮かんでいるような気がする! それはとてもとても喜ばしい事実であるし、心の中ではよくそれを自覚してもいた。
 しかし、彼は、熱い悦びと同時に冷たい苦しみが意識の片隅に今もなお転がっている事を忘れる事はなかった。奇妙な冷静さが彼の悦びを徐々に疑問へと変質させていった。
 一体、なぜ。
 という言葉が、彼の心……のみならず、存在を知覚した手足、腹、胸、頭に充満している。





何かUSBメモリー漁ったら書きかけの小説が出て来た。
最初の部分だけ書いてみて放置とか何やってんだろうか。たぶん飽きたんだろう。

気が向いたら続き書く(←9割方書かないフラグ)。





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Last updated  2008.10.14 22:30:45
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