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tartaros  ―タルタロス―

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2008.10.29
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カテゴリ:読書
 小松左京「くだんのはは」(角川ホラー文庫『自選恐怖小説集 霧が晴れた時』収録)を読んだ。
 さすが「傑作」と目されるだけの事はあり、非常に面白い。

「くだん」とは「件」と書き、人面牛身で予言の力を持つ妖怪とされる。
「くだんのはは」に登場する件は、人面牛身ではなく牛面人身という、ギリシャ神話におけるミノタウロスを連想させる姿をしている。人と動物の混ざり合った……一種のキメラともとれるが、これはある意味では「奇形」である。
 奇形という言葉からは、かの帝政末期のロシア宮廷で権勢を振るった怪僧・グリゴーリ・イェフィモヴィチ・ラスプーチンを思い出してしまう。彼は怪しげな術を能くしてアレクセイ皇太子の血友病を治したことから信頼を得たが、前髪に隠れたその額には二本の短い角のような物が生えていたともいう。また、こちらは中国の説話だが、額に珠のある男が居た。彼はその珠が有る間は幸運に恵まれていたが、他人に珠を奪われてからたちまち不運になってしまったという。
 件は予言の力を持っている。生まれつきの奇形・異形は、何か常人とは異なる力を持つと同時に、あたかも生まれた時に既に歯も髪も生えていたがために忌まれて捨てられた酒呑童子のような側面をも持っていると思われたとも考えられる。いわば奇形はその奇形なるが故に常ならざる神秘的な認識と、異形として白眼視される、肯定・否定の同居する両義的な存在と解されていたのかもしれない。かつては双子を忌む民俗が存在し、産まれた双子はどちらか片方を殺していたという話がある。明治時代になってもこの習慣が続いていたために警察沙汰になった事まであるというが、これなども多くの場合、人間は母親から一人でしか産まれ出ないことからすれば、まるで奇形のように捉えられていたものであろう。
 ところで、主人公である「僕」が覗き見た少女=くだんの住む部屋は、絶対に見に行ってはだめだと言い聞かされていた。それでも「僕」は終戦直後の混乱の中、ついには覗き見てしまうのである。普段、絶対に入れない部屋や見る事ができない空間というのは、通常=普通=健全な空間を生きる我々普通人からすると、幾分か怪しげな印象を伴って意識の奥底に根付くものではないだろうか。普通は絶対に入る事ができない、そしてそこには普通ではない「何か」が確かに存在している。そして、その「何か」とは強烈な奇形なのだ。意識の底で未だ見ぬ怪しげな空間を幻視する時、心の中でその空間は通常とは全く違う奇妙な場所、「奇形」化した空間として誕生する。
 「奇形」化がもたらされた空間をまさしく個人の意識から現世で視、感じることのできる形ある現象のレベルにまで引き上げるのが、この場合は牛の頭部を持った少女・くだんなのである。





……これで終わりじゃありません、まだ続きます。たぶんね。





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Last updated  2008.10.29 22:01:18
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