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tartaros  ―タルタロス―

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2009.01.03
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カテゴリ:読書
そろそろ受験シーズンですが、
全く何の関係がある訳でもなく竹内洋「立志・苦学・出世――受験生の社会史」(講談社現代新書)という本を読んだ。






 簡単に言えば、明治以降の近代~現代日本(そうは言ってもコレ、20年近く前の本なんだけど…)における「受験」(主に旧制高校)の歴史をまとめた本。けれども、どうも一般に言われているような“学歴”社会の萌芽と変遷の歴史と解することもある程度はできそうだ。高所得者=高学歴・高学力だとだいぶ前から言われているが、それはここ数年から急速にそうした社会が出来上がった訳ではなく、それこそ大昔っから全くその通りで変わっていないらしいことが窺える。
 元々、「刻苦勉励して立身出世」という理想は江戸時代の下級武士に多くみられた考えだったと言う。彼らは身分の低さゆえに高い地位に就くことが難しかったので、その分を学問に励むことによって補おうとしたのだ。一方のその他民衆は、日々の暮らしで精一杯だったので学問に励むことなど不可能だった。
 だが時代の流れと共に、誰でもある程度の教育は受けられるようになった。しかし、である。そもそも貧富における所属階層の高低の差異によって、例え貧者に進学への熱意があったとしても財政の苦しさゆえに諦めざるを得ないこともある。しかも努力が実って志望校に通えたとしても“ハビトゥス”(精神の型)が貧者のそれであるが故の、高階層所属者との軋轢めいたものさえも発生し得る。国民皆学の完成は、同時に今までは起こるはずの無かった新たな貧富の格差を表出させるという皮肉な結果を招いたのだ。こうした事態は、学歴の再生産へと繋がりかねない。高学歴・高所得の家庭は子弟に優れた教育を受けさせ、低学歴・低所得の子弟はその反対だ(もしかしたら意欲そのものが欠ける場合もあるかもしれない?)。
 著者がハビトゥスの概念を用いて説明している事からも考えられるが、富者と貧者との間には今に至るも埋め難い大きな溝が横たわっているように思われる。教育についてもそうだし、ブルジョワ的とプチ・ブル的な文化対立、果てはいわゆる「教養主義」の裏に潜んでいた利害・損得まで。
 終盤、著者は説く。


従来は人々の視線は出身階級よりもしばしば学歴にむかったが、いまや視線はしだいに学歴以外の出身階級そのものにむかっている。そのぶんアイデンティティの基礎要因としての学歴のウェイトは低下している。(188p)


 本書は20年近くの前に出版された本であるために、必ずしも現代日本の受験状況と合致するとは言えないかも知れないが、それでもかなりの部分で的を射た指摘であるようには思う。全国民的な生活水準の向上によって学問に励んで立身出世することが常に尊ばれるという時代ではなくなったように、志望者が(レベルはともかくとして)どこかしらの大学には必ず入れるとう、いわゆる「大学全入」時代の到来が叫ばれる昨今、これまで以上に大学進学者が増加するなら、著書の指摘は――少なくとも大学進学者に関して言うなら――出身大学という要素に加えて、当て嵌まる部分が多いのではないだろうか。
 同時に現代は格差化が叫ばれる時代ではあるが、貧富の格差の固定化による学歴の再生産過程は、かつての時代のような貧者のジレンマをいずれ描くことになるかもしれない。「教育の機会均等」という高邁な理想だけではカバーしきれないだけの格差なるものは、容易には解消しえないものである。だが、決して決着のつくことの無き相克の中から相反する文化が誕生すらしていることを視座に据えてみたとき、貧富の差と学歴の高低という、多くの場面で不可分に近い関係がもたらす歴史的な皮肉を思わざるを得ないのである。






siyou.jpg


(※関係があるようで無いようであるようで、やっぱり関連性の薄い画像)





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Last updated  2009.01.03 23:59:05
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