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tartaros  ―タルタロス―

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2009.01.25
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カテゴリ:読書
山田風太郎「甲賀忍法帖」(角川文庫)読了。

時代小説だけど、感覚的にはむしろラノベに近いものがある。
一日で読み終わるという現象を久方ぶりに体験した。
脳内BGMはもちろん例のあの曲である(ぶっちゃけ、アニメ版のOPテーマなんだけど)




 時は江戸時代初め。

 竹千代と国千代の二人の孫のどちらに江戸幕府三代将軍の座を継がせるか決めかねた大御所・徳川家康。彼は千年の昔より憎しみ合う伊賀鍔隠れ忍者衆甲賀卍谷衆という二つの忍の里から精鋭忍者を各々十人ずつ選抜して殺し合わせ、期日までより多く生き残った方を勝ちとして、伊賀を竹千代、甲賀を国千代と定めてどちらが勝ったかで次期将軍を決めるという案を実行に移す。こうして一時的な休戦状態に入っていた、二つの隠れ里の総勢二十人の精鋭忍者たちは、己の知り得る限りの忍術・忍法を駆使した凄惨な死闘にその身を投じる事となる。
 だが、甲賀忍者の御曹司・甲賀弦之介と伊賀忍者の姫・は、産まれは敵同士でありながらも深く愛し合い結婚を誓った恋人同士であった。戦いの運命は、二人を否応無しに引き裂いて行く。
 果たして、死力を尽くした忍法合戦の勝敗は? 
 そして弦之介と朧、二人の運命や如何に――?






 …………というのが大体のあらまし↑
 
 とにかくこの小説、数十年前の古い作品と思って侮ってはいけない。およそ現代的な娯楽作品、とりわけバトルがメインとなっている作品が有する要素、その萌芽を確かに感じさせる。 昨今のライトノベル界隈で何が流行っているのかと問えば、「異能力」を持ったキャラクター達がド派手なバトルを繰り広げる事だという回答が十人に聞けば七人くらいは返してくれそうな気がすると俺は勝手に思っているが、まさしくその源流が、この「甲賀忍法帖」という小説だというのは疑う余地が無いのではないだろうか。直接的な「異能力」ブームの火付け役が奈須きのこ「空の境界」、高橋弥七郎「灼眼のシャナ」、あるいは鎌池和馬「とある魔術の禁書目録」といった人気のある諸作品群である事は言うを俟たない。けれども全く前例の存在しない斬新な発想と思われるものでも、探せば意外とそうした源流に行きつく事は可能であろう。先人の残した蓄積の上に今日の隆盛は築かれるのである。そうした意味で、「甲賀忍法帖」は異能力バトル作品の遠い祖先なのだ。

 蜘蛛のように壁を這いずり、常人を遥かに超えた粘性を持った唾液を飛び道具とする。
 伸縮自在の肉体を鞭のように操り、手足が触れた物を斬り裂く。
 女の髪をより合わせて作った特殊な縄を時には鞭として、時には刃として振るう。
 殺意を持って相対した者の攻撃をそのまま相手に跳ね返す視線。
 あらゆる忍術・忍法を無効化する能力。
 
 これ全て「甲賀忍法帖」に登場する忍法のごく一部である。
 忍者たちが使う技は確かに超常的と呼ぶにふさわしい物だ。だが、それらには創作ながらも読者に合理性を印象付けるための設定が例外なく設けられており、忍法が単なる魔法めいた不思議な術という扱われ方をしていないのである。思うに、この点にこそ異能力を異能力たらしめている最大の魅力がある。何の説明も無しに巻き起こる奇跡や魔法の類はあまりにも不条理に過ぎるのであって、やはりそこにはある程度の説明が欲しい! ……という欲求を見事に満たしてくれるからこそ、異能の力を有する人々の戦いは好まれる。一人の忍者が幾つもの術を使うのではなく、一人につき一つしか能力を持っていないというのもライトノベル的な異能力者としての側面を際立たせる。
 しかも恐ろしい事に、総勢二十人(実際に詳細な忍法を使う機会が有るのは十八人)の忍者たちに例外なく何らかの見せ場と、明確にキャラクターを「立たせる」ための展開が用意されている。キャラクターの数が多いにも関わらず、おかげで読んでいて一寸も退屈しない。驚くほどスピーディな展開にはただただ舌を巻く。
 異能力者たるキャラクター群をみな「立たせる」こと、それ自体を非常に巧みに行っているためにグダグダする様子が無い。いわば、非常にライトノベル的な「キャラクター」に重きを置いた小説と見る事もできる。今日の「キャラクター」に大きな魅力を持たせた「異能力バトル」ライトノベル作品の土台石は、数十年前に「甲賀忍法帖」によって朧気ながらも築かれていたのである。
 

 ……そして、細かい理屈は抜きにして滅法面白い。
 力と知略の限りを尽くした血煙吹き荒れ火花飛び散る忍者同士の壮絶な死闘。
 その果てに訪れるあまりにも悲劇的な結末。

 ライトノベルが好きな人は、一度は読んでみても良いかもしれない。


  





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Last updated  2009.01.25 22:55:15
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