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tartaros  ―タルタロス―

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2009.04.19
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カテゴリ:読書
 就職活動で最も難しいのは、筆記試験でも面接でも試験会場まで迷わずに辿り着くことでもなく、志望動機を捻り出す事である。マジで困るわ……毎回毎回違うのを考えなけりゃならないんだから。






D〔di:〕「キグルミ(で、醜さを隠そうとした少年のはなし)」を読んだ。


「リバーズ・エンド」と「半分の月がのぼる空」と「脂肪の塊」と「女の一生」を鍋に放り込んでゴチャゴチャにかき混ぜて、食紅と砂糖とゼリービーンズをブチ込んで可愛らしく、見た目だけは甘くて美味しそうで、その実とんでもない苦味がする。そんな小説。とりあえず鬱エンドだ。何となく桜庭一樹っぽい気もする。どっちも女性作家だから? 気のせいかしら。

 外に出たい、故郷で腐っていたくないという若々しい願望。そして夢。新天地を見つけた少年の心が希望に充ち溢れていない訳があってたまるものか。けれどもあまりに厳しい現実と、ようやく見つけた希望が破れて醜さが露呈していく虚しさったらない。望みがひとつずつ崩壊していく様は、「女の一生」の主人公であるジャンヌの不幸せっぷりをも彷彿とさせる。かつて虚飾を嫌い、そこから逃れたはずが、そちらの方がよっぽど虚飾だった。いや、本質的にはどこに行っても虚飾から逃れられない。逃れようがない。
 そして大人になり、同時に全てを失った少年は故郷に還る。そこに在ったのは、やはり虚飾でしかなかったが、しかし安らぎであった。
 どこに行っても偽りと虚しさしか存在しないのであれば、人が最後に還るのはやはり自分を育んだ虚飾なのだろうか。完全な逃避など不可能で、結局は大なり小なり打ちひしがれて世界の一員へと再び戻るのだろう。若々しさとは、同時に痛々しさの裏返しでもあるのかもしれない。
 「女の一生」のジャンヌは不幸続きの人生のなか、孫娘に最後の希望を見出したところで物語が終わっている。つまり、それは終着点であると同時に新たな出発点でもある。けれど「キぐるみ」のトシは、あらゆる希望を(終いには正気まで)喪失した状態で故郷に戻って来た。それは、若者だけが持てる荒唐無稽っぽいデカい夢が失われた後の末路だ。つまり、彼の中の「若者」は死んだ。彼という人間自体はこれからも生存し続けるだろうが、明るい未来の展望を描いていた「若者」は既に亡い。誰が悪いのでもない。それが生きる上でのどうしようもない現実なのだ。トシは全ての人間であり、全ての人間の死んだ若者像を最も極端な形で抉り出したキャラクターであると思う。人がその内に飼う「若者」という生命体はいずれ死する運命。それが定まっている以上、年老いたジャンヌのようにその死を新たな起点とするのは難しい。その終着点は「若者」にとっての墓場であり、「若者」はまさに死んでしまうのだから。





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Last updated  2009.04.19 17:28:27
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