826569 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

tartaros  ―タルタロス―

tartaros  ―タルタロス―

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

こうず2608

こうず2608

Favorite Blog

9月も終わりですね。 saruninkoさん

Japanisch Ahnener… バルザーヤさん
DESTINY アルト・アイゼンさん
あの三島由紀夫・大… sh3042さん
ごった煮底辺生活記(… negibonさん

Comments

正体は狐ですなぁ~w@ Re:「仏陀再誕」を観てきたぞ(^q^)/ (※ネタバレ全開)(11/25) 個人的には荒井よりも覚念のほうがヤバイ…
村石太マン@ 宗教研究会(名前検討中 哲学的 心理学的 文章ですね。文系 理…
村石太マン@ 宗教研究会(名前検討中 村石太仮面 で 検索中です 一般の新聞は…
村石太仮面@ アルジェリアと フランス~ フランスの核ミサイル フランス カルト で 検索中です なぜ …
村石太仮面@ アルジェリアと フランス~ フランスの核ミサイル フランス カルト で 検索中です なぜ …

Freepage List

2009.05.28
XML
カテゴリ:日常の出来事
消化してないモノが多すぎるのです。


・積読二十数冊

・東方

・映画DVD

・ひぐらし(原作)

・去年の11月から作り始めて未だに未完成のガンプラ

・アイディア「だけ」はある短編小説を書くこと

・履歴書……



どれも頑張ればすぐに終わるのだけれども、気が付いたら居眠りしている(^p^)


――――――


「彼」が誕生したのは、海に特有の磯臭さと、腐りかけの魚が放つ生臭さと、鉄の獣の体臭にも等しい油の混ざった港町だった。戦争が終わって十年近く、幸いにもほとんど攻撃らしい攻撃というものを受けることのなかったその町は、そこに住まう人たちの意思はどうあれ、対外的にはごくありふれた町でしかなかったと言えるだろう。常に漁船の滑るように出入りする港湾は特に何の歴史的に重要な出来事の舞台となることも無かったかのように、ただ時間だけを連綿と受け継いできただけの、黒々としたコンクリートと日を浴びて水気を飛ばされた塩の原が続く原野でしかありえなかった。この原野なる表現は考えようによってはあまりに不適当なものとうつることだろう。けれども、外部から見るという視点の位置は常に残酷である。荒野に住まう狼を自分と同じ文明世界の一員と考えるほど寛容な者は珍しいはずだ。住人たちはただ日々を暮らすのみであったが、それを許さぬのは常に一段上の高座から見下ろす異界の人なのだった。
 かくて「彼」がこの地上に生を享ける数年前の段階で、戦後復興と国家そのものの重工業化政策を推進すべく、磯の臭いは鉄の臭いに取って代わられるようになった。漁師は工場労働者に。船は歯車に。魚はネジやボルトや色々の機械に。あれだけ頑固にこだわっていたその町の人々は、あっさりと海を捨てて陸の人になった。いや、よくよく考えてみると、そもそも彼らの営みはただ生を続けるための「行動」に過ぎなかったのかもしれないのだ。それが自分たちの命を利する限り、彼らはその時その時で常に最も合理的で素晴らしいと思える策を選び取るだろう。後に「彼」が最も嫌悪したのも、もしかしたらそうした変節漢の群れに自分自身も産まれついてしまった事であったかもしれない。
 ともあれ、「彼」は、産まれた。
 その日は6月も半ばを過ぎ、もうほとんど初夏から本格的な夏への転換が見られ始める時季で――年がら年中漂っている磯と油の混合物という様相を呈する臭いが、もう、いよいよ本格的に強まって来る頃合いだった。町の人々はすっかり慣れ切っていたので気が付かなかったかもしれないが、まるで爆弾が思いっきり破裂して熱と風と閃光を撒き散らすのと同じくらいに刺激的で、鼻と精神を捻じ曲げずにはおかないような悪臭だ。けれども、戦争中には一つの爆弾も一個の弾丸もやっては来ず、一人の敵兵も一声の外国語も見られなかった地域だけに、それはある意味で当然すぎるほどに当然過ぎたはずだったろう。もちろん、「彼」の両親もその中の一人である。
「彼」の父は、漁業地帯から工業地帯に変化していったこの町の他の人々がそうであったように、愚直とも言えるほど真面目な工場労働者だった。三代前までは確かに海水を吸ってフジツボを船底で繁殖させていたような漁師だった彼の一族が、今はオンボロの漁網を捨ててネジを引っ掴んで唸り猛る機械と日々の対話を率先して行うような、「いかにも模範的な」労働者だった。
 一方の母親は、少しばかり可哀想な人だった。子供の頃からどこか人とは違う、まるでボーっとすることが仕事みたいな人だった。顔は同年代の誰よりも可愛らしかったけれど、他人から馬鹿にされても噂をされても、皆が自分を好いてくれていると思って疑わなかった。純真さという属性は、誰かを微笑ませると同時に本人に不幸をもたらす事もある。しかし、彼女は誰かが笑いかけると嬉しかったし、その裏にどうしようもなく下卑た獣性の欲望が潜む事があるという事にすら気が付くことは一度も無かったと言っていい。それどころか、底なしの純真は本来なら女として最大級の不幸であろうその事実すら、相手の穴だらけの偽装によって覆い隠してしまったのである。
 だから、彼女が誰の子とも知れぬ種を宿していると判ったときも、大きくなったお腹を抱えて撫でさすりながら、自分がもうすぐ母親となることを素直に喜んだ。家族や医師から詰め寄られた時も、たくさんの「相手」から口外をしてはいけないよとしつこく念を押されたことを理由に、真実を話そうとはしなかった。
 この時、彼女の子宮に宿った子供こそがつまりは「彼」に他ならない。
「彼」自身は、世間並みと自認する人々から母に向けられた「白痴」なる二文字が何を意味するのか。大人になるまでは知らなかったが、知ったからとて別に怒ることも無かった。その時にはもう母は亡くなっていたし、だいぶ昔の事だから記憶にすら残っていなかったのである。
 母よりも、「彼」は祖母を愛した。祖母こそが「彼」にとっての母親像の代理だったと言えるだろう。

……。


――――――


 考えてた短編小説の書き出しを適当に書いてみた。これで目的の一つを消化した訳ではないのが悲しいけれども。……何か、ジュースキントとアーヴィングに無駄に影響を受けているような印象が自分ではするのだけれども、どうだろうか。てか、以前より文体が若干ながら変わったような気がする。

 






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.05.28 22:56:11
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.
X