tartaros 　―タルタロス―

　俺自身は実際に会ってないので完全なる伝聞情報なのであるが、父方の親戚で、俺にとっては従兄弟にあたるY君(現在、高校生)が、最近すごくDQNになってるらしい。
　
　実際に合って話した者たちの証言に拠ると、

「明らかに校則違反の先の尖った靴を履いて登校し、謹慎処分を喰らう」
「黒のペディキュアを使用」

　などといった可愛らしい(？)ものから

「彼女の家に入り浸って、３日は帰ってこない」

　といったものまでが。他にも何かいろいろ言ってたけど、もう忘れました。


　この話を聞いた時、「はあー。あのイガグリ頭だった彼がねえ……」などと薄ボンヤリと考えつつも、何だか妙に感慨深くなってしまった。
　Y君は、彼の属するSさん一家の中にあってはなかなかの反逆児であった。Sさん家には彼の他にも姉二人と兄一人が居るのだが、他の三人が割と大人しい性格をしているのに比べ、幼少の頃より彼一人だけは何故か非常に自己主張が強い活発な性格だったのだ。それが、ここに至って一気に花開いたというべきか。
　というか、この断片的情報だけでDQNと断ずるのは明らかに尚早なのだけれども、語る人々の口ぶりは、十代後半に突入してさらに我の強さを増したY君が、どこか遠い場所にでも旅立ってしまったかのようなものだった。
　とはいえ、やはり歳月と共に人は変わるものなのだろう。
　俺も今年の帰省は、会う人会う人に「痩せたね！」「髪伸びたね！」とばかり言われているのだ。とりあえず、どちらも一応は真実なので否定する必要も無いのであるが。