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tartaros  ―タルタロス―

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2009.10.05
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カテゴリ:読書
 アナトール・フランス「シルヴェストル・ボナールの罪」(伊吹武彦訳・岩波文庫)を読んだ。
 主人公であるところの老学士院会員、シルヴェストル・ボナール氏は、駄目なインテリの割と典型というか、頭でっかちで世間知らずの所を持った、少々子供じみた人物であるように思える。
 
 ボナール老人の日記という体裁で進行するこの作品には随所に古典文学や哲学書が行われ、一種、衒学の様相さえ呈しているのだけれどもそれを以てしても彼の精神的に未熟な側面が垣間見られるのが面白いところだろう。
 それの何が悪いという訳でもないのだけれど、彼が行う自分自身の理屈に従っての振る舞いは、何だかどことなく苛立たせられるものがある。

 見識豊かな人物であるはずのボナール氏の子供じみた振る舞いは、彼の持つ教養と比較すると一見して不自然な組合せのようにも思えるが、けれども、実は意外と違和感が無い事に気が付くのである。
 つまり、彼の持つ知識とは彼自身の内なる精神を見つめる事に他ならない。それは人間の心を富ませるが、しかし眼を外部に転ずる事が必ずしも上手くはない。ボナール氏は、決して人付き合いの下手な方とは思えないのだが、それでも自分の目的を最優先し続けて、他人から自分勝手にも取られかねないような行動に出ているのは、つまるところが老境に至ってなお、ある種の未熟さが抜け切れてはいないという事ではないだろうか。
 内向きの知識と外部を見据える目と、両方の調和が欠けた人物を描写する事は下手をすれば単なる社会不適合者に成りかねないが、しかしあえてそれ行うのは、そのどちらに偏り過ぎても人間は成熟できないとでもいう所なのだろうか……人間は何かを得るために何かを捨てねばならぬ時があるのだと思わせられる。

 物語終盤において、ボナール氏が後見人を努めた少女と、また彼の教え子の青年は結婚する。ボナール氏が二人の幸福を神に祈って物語は幕を下ろすが、これによってようやく彼の精神は成熟へと到達したのかもしれない。





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Last updated  2009.10.05 23:09:23
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