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2011.06.10
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【送料無料】なぜ君は絶望と闘えたのか

光市母子殺害事件。

この事件は本当にショッキングな事件だった。

光市が遠い場所ではなく、何度か訪れたことがある場所、ということもあるが、

何より、事件自体が常軌を逸していた。



当時18歳の少年が、配管工事を装って訪問した先で、

母親を殺害した上で暴行し、1歳の女児まで殺害した、という事件。

当時私は工事会社に勤務していたということもあって、

「工事会社の者を装って訪問」という手口に社内で衝撃も走ったことも記憶している。



この事件の経緯は、さらに混迷を極める。

母子殺害暴行について、少年は全て認めているにもかかわらず、

なぜこんなにもめていくことになるのか、報道を見ながら全く理解できなかった。

母子を殺害したことも、その経緯も、

全て被告が認めている以上、論点になるところが無いのに、と思ったのだ。



さらに最高裁まで進んでいくと、被告少年はそれまでの説明を一転させ、

ドラえもんがどうのこうの、とかワケわかんないことを言い始めるし、

橋下知事(当時は知事じゃない?)もなんだかよくわかんないことを言い出すし、

報道を見ていても「はあ~~~~???」と呆れるような経緯をたどっていく。

まったくもって、理解できない事件。経緯。



それが、この本で溶けていった。



一審、二審とも、無期懲役が言い渡される。

死刑ではなく、無期懲役。

終身刑制度が無い日本では、無期懲役は死刑に次ぐ重い刑罰だけれど、

妻子を無残に殺害された量刑としては軽すぎる。

それが、悔悟を伴うものであるならともかく、

少年からはそれらしいものが見受けられない……。

何度かそれらしいものを口にはするけれど、それは口ばかり、形ばかりにすぎず、

心の伴ったものとは思われない。

にもかかわらず、「2人しか殺していない」という理由で無期懲役。

これは確かに、理不尽な判決だ。



また、繰り返し問題とされた、少年法。

少年法のために、遺族・被害者は事件の経緯、その後を知ることすらできない。

法廷に被害者の遺影を持ちこむことすら、出来ない。

その被害者の心情すら、取り合ってもらえない。

報道も被害者については無遠慮に実名で報道していくのに、

それまでのつましいけれど幸せな生活を詳細に報じていくのに、

少年については名前一つ、顔写真一つ、報道されることがない。

加害者が救済され、被害者が置き去りにされる現実にも疑問を提示している。

そして、本村氏が積極的に社会運動に関わっていく経緯。



『なぜ君は絶望と闘えたのか』という題の疑問に応えるとすれば、

周囲の手助けであったり、殺害された妻子であったり、だろう。

けれどこの本は単に、それらを「お涙ちょうだい」的なものに終わらせず、

司法の問題、社会の問題を提示しているのだ。



結局、本村氏の運動がもととなり、社会は動いていく。

被害者救済に政府も司法も、重い腰を上げたのだ。

社会を変えていく。

これは、すごいことだ。

読んでいると、鳥肌が立つほどの感動を覚える。



結局、2008年、差し戻しとなった広島高裁で、死刑判決が出る。

今が2011年だから3年前だ。

この本が出版された時点で、その判決が最新のものとなり、

死刑判決を受けて、本村氏が墓前に報告したことを添える。

また、元少年と面会して、その判決を受け入れた様子であることを、

書き添えている。



死には死を持って購う。

本村氏はそれを求めていたし、

死刑判決の後の面会で、元少年もそうあるべきだと思っている、と書かれる。

この奇妙な合致は何なんだろう、と不思議な感じがする。

何か宗教に繋がるような、死をじっと深く見つめることの意味が、あるのかもしれない。



Wikipediaで光市母子殺害事件について読んでみたのだけれど、

広島高裁での死刑判決後、弁護側は即日上告したとのこと。

出版が2008年であることから、上告したこと以上は触れられていないのは当然だが、

その後、この事件はどうなったのだろう。

まだどこかで(上告だから、最高裁か?)、続いているんだろうか。







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Last updated  2011.06.10 12:39:28
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