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政治評論家 伊藤 達美 二院制における参議院の存在意義と役割
代議制国家における二院制の発祥はイギリスである。 イギリスの場合、下院議員は選挙で選ばれるが上院の議員は選挙ではない。 二院制の根本的な目的は、選挙で選ばれる下院の「熱狂」による間違った判断から、いかに国家と国民と国益を守るか、ということにある。 わが国の場合、衆議院の「熱狂」を食い止めなければならないのに、参議院においても衆議院と同じような熱狂がそのまま伝わるようなに仕組みでやってきた。 しかし、肝心なことは、人間が判断には間違う可能性があるということだ。 代議制(議会制民主主義)を構成する議員は、選挙権を有する国民の選挙で選ばれる。 その選ばれ方が重要になってくる。衆院選挙の場合、小選挙区比例代表並立制が導入されて以降、マスメディアが喧伝して政治イッシュ―が形成されていくケースが少なくない。 その場合、時に大ブーム(熱狂あるいは風)を起こして選挙結果を大きく左右する。 その結果、行った政策が間違うこともある。例えば、政権交代による民主党政権の失敗等々である。そういう間違いは昔からあった。人間(政治家)が判断することには、間違いもあるからだ。 衆議院(政治家)の間違いを食い止めるために二院制があるのだ。 参院無用論なるものは、二院制の持つ意味、二院制の意義、参院の存在意義に無理解な者たちが暴走する世論に迎合しているに過ぎない話である。 民意の熱狂と世論の暴走をどうやって制限していくか、というのが二院制の目的であり、代議制の意味なのだ。 戦後日本の憲政史を見ると、過去に衆議院の判断が間違っていた法案があり、「良識の府」としての参議院が否決した法案が二つある。 一つは、衆院選に政権交代を可能にする二大政党制をめざして小選挙区を柱とする小選挙区比例代表並立制の導入した選挙制度改革法案である。 同法案は、結果的に民意の熱狂と世論の暴走の中で衆議院が可決した。 これに対し、「良識の府」とされる参議院では否決された。本来、参議院で否決したことで廃案になる。
ところが、当時の民意の熱狂と世論の暴走に参院が迎合せざるを得ない状況に追い込まれた。この時、新聞を中心とするマスメディアと、自称「改革派議員」(熱狂派議員)の「衆議院で可決したものを参院で否決するのはおかしい」という間違った論法に参院が屈した。
しかし、小選挙区制比例代表並立制の下、衆院で多党化、弱体野党、与野党問わず議員の劣化を見れば、参院の判断が正しかったことは明らだ。 民主主義の一翼を担うマスメディアにも「民意の代弁者になっているのだ」との思い込みがあり、結果的に「世論を暴走させる仕組み」が形成された経緯がある。 衆院選挙制度にも時に「民意を暴走させる仕組み」という欠点がある。 それを唯一、止められるのが「良識の府」とされる参議院なのである。 そのことを参議院正副議長、常任委員長、特別委員長を始め、すべての参議院議員は、改めて肝に銘じて、ほしいものである。(止) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022年06月24日 11時04分06秒
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