5日の日記
・「知る権利」をめぐるメディアの温度差・ ・尖閣「ビデオ映像」の一般公開を求めない朝日、毎日の摩訶不思議か・ 11月5日、中国漁船衝突事件の衝突時の「ビデオ映像」がインターネット上に投稿され、中国漁船の蛮行が世界中に伝わった。新聞・テレビはトップニュースで扱い、映像を紹介した。日本領海を侵犯した中国漁船が海上保安庁巡視艇の停船命令を無視して、巡視船2隻に衝突する衝撃的な内容である。 中国漁船衝突事件では、逮捕した中国人船長を「処分保留」まま釈放したことに加え、政府にビデオ映像を一般公開する姿勢が全くないことに国民の多くは疑問に思い、政府の弱腰ともいえる対応に不信感を強めている。政府は近代法治国家として「国家の意思」を示すことなく、中国の圧力に屈し、日本の名誉と威信を傷つけ、法治主義を破壊する結果を招いた。 日本国民の多くが知りたいのは、わが国の領海である沖縄県尖閣諸島沖の事件現場で、いったい何があったのか、ということである。 この間、産経主張は「対中外交/首相はビデオ全面公開を」(10/28)と促し、さらに「尖閣ビデオ/国の信頼かかる全面公開」(11/4)と迫り、読売社説は「やはり一般への公開が必要だ」(11/2)と説いている。一方、日頃、国民の「知る権利」「情報公開」を声高く訴えている朝日、毎日は、なぜか沈黙している。これではメディアとしての自殺行為と批判されても弁解の余地がないだろう。 わが国のメディアには事件当初から「中国を刺激したくない」という心理が先行し、中国に偏った報道姿勢が見られた。事件をめぐっては日中両国内で抗議集会やデモが行なわれた。中国の反日デモの場合、わが国のメディアは場所や人数、参加者の「言い分」から、中国当局の「言い分」まで詳細に報道した。ところが日本国内で行われた中国への抗議集会、デモを主要紙は報道しなかった。東京都内では10月2日(約1600人)、10月16日(同2800人)の2回、大規模な抗議集会が開かれ、その後デモが行なわれた。10月2日の抗議集会は、海外マスメディアが報じたが、朝日、毎日、読売、日経、産経等の主要紙は一行も報道しなかった。10月16日の集会は海外マスディアが大きく伝えた。しかし、日本のマスメディアは産経が比較的大きく報じただけで、他紙は真正面から取り上げていない。毎日、読売は中国外務省が16日夜、中国大使館前での中国への抗議デモを受け、「『日本国内の大使館や総領事館の安全確保を求めた』との談話を発表した」(10/17)と特派員電関連で数行だけである。 領土を守るには国論の一致、情報の共有が不可欠である。マスメディアには相手国の外交の質を見抜き、国民に知らせる責務がある。中国外交の本質は奸智智と権謀、譎詐(けっさ)の連続である。無理難題を突きつけ、妥協を迫る。妥協すれば、新たな圧力で要求をエスカレートさせる。 朝日新聞、毎日新聞に国益に立脚した国家観と領土認識、領土防衛意識を求めることは無理なことなのかも知れない。朝日新聞、毎日新聞は近代国家の存在基盤の重要な要因である領土の意義をどう考えているのか。中国漁船衝突事件に関する朝日新聞、毎日新聞の紙面からは、わが国の国益より「中国を刺激してはいけない」という思惑が優先し、中国寄りがにじみ出ている。 尖閣諸島を守り、対中外交を建て直す意味から朝日新聞、毎日新聞を加えたわが国のメディアには、政府の外交敗北を糾弾、「ビデオ映像」の一般公開を強く要求し、国民の「知る権利」に応えてほしいものである。