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カテゴリ:今日読んだ漫画
少年は、金髪碧眼、黒のタートルネック、Gパンにスニーカー、普通は14~5歳の姿が基本のようだ。けれど、年齢は自由に変えられるらしいし、人の寿命や記憶も操れるらしい。時にはいるはずの無い家族の一員となって、ある時は突然遺産相続人となった11歳の少女の執事として雇われて、あるいはもっと運命そのもののようにこつ然と人の前に現れ、こつ然と消える。現れる時代も国も様々だ。 少年は、鳥のように俯瞰的に人の人生を眺めている。手塚治虫の火の鳥にも少し似ている。でも、宇宙的といってもいいほど大きな視野に立っている火の鳥と決定的に違うのは、この作品がとてもパーソナルな物語だということだ。 少年の興味はとにかく人間にある。「人間って何だろう。」この疑問が、少年が人間にかかわる唯一の動機だ。一人の人生に深くかかわってしまい、傷ついて涙を流したりもする。生よりも死を選ぶ人間にいらだつ事もある。 もしかすると少年は、自分と共に永遠の生を生きてくれる人を捜しているのかもしれない。その証拠に、何度と無く「永遠の命を手に入れてみないか」と持ちかけている。(ことごとく断られているけれど)彼にはそんな儚い生にこだわる人間が理解しがたいのだろう。それゆえに人間への興味が尽きないのかもしれない。 さて、そんな少年が出逢う様々な人々。これがとても魅力的なのだ。欲に囚われた人、独裁者、殺人鬼、哲学者、普通のOL、普通のおじさん、自由に生きる少女。特に、老人が素晴らしくいい。悔いの無い人生を歩んだ人も、そうでない人も、その人なりの深みがある。山下和美という人が何歳なのか知らないけれども、何故こんなに黄昏の時を生きる人々の重みを出せるのかとても不思議だ。老いた人々、そのひとりひとりの頭の中にしまいこまれた人生にとても魅力を感じ、皺に隠された若き日の姿を想像するのが楽しいのかもしれない。 (余談だけれど、作者は初老の紳士が一等お気に入りという気がする。それも50年代の洋画に出てくるジェイムス・スチュアートみたいな。あるいはクラーク・ゲイブルとか。柳沢教授もまさにそんな感じ。) 最後に、この物語はまだ連綿と語り続けられていくだろうと思うのだが、いつか、この少年がどこから来てどこへ去っていくのか、そんな話を読みたいと思う。少年はついに死を知ることになるのか、そもそも彼は何者なのか。語られないかもしれないけれど、私はとても気になっている。
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