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2008.10.26
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カテゴリ:今日読んだ本

 
文庫版          ハードカバー


  ネタバレを気にする方はスルーしてください。  

 

朗読者 ベルンハルト・シュリンク著

学校からの帰り道、気分が悪くなってしまった15歳のミヒャエル。彼を介抱してくれたのは21歳年上の女性、ハンナ。そのことがきっかけで、ミヒャエルは彼女に恋をするようになる。
何度も逢瀬を重ねたある日、ハンナはミヒャエルに本を朗読することを求め、求められるまま本を読んで聞かせることが二人の習慣となっていった。

しかし、甘い恋の日々は、突然の彼女の失踪という形であっけなく幕を閉じてしまう。
まだ少年だったミヒャエルには彼女を探す力も無く、なすすべも無いまま本来の日常生活へ戻るしかなかった。

そして数年が経ち、二人は思いがけない再会を果たす。
ある看守を裁く法廷の傍聴席に座る、法学部の強制収容所ゼミの学生と、その法廷に立つ被告人として。

その裁判を通してミヒャエルは真実の彼女を知ることになる。。。

 

この作品は大きくミヒャエルの少年時代と、大学生以降の2部構成となっている。最初の出会いからハンナの失踪までの話は、単なる官能小説かと思ってしまうような描写で非常に面食らった。
はっきりいって、ちょっとうんざりしかけていたのだが、後半に入って様相が一変する。

 

ミヒャエルは所謂日本で言うところの「戦争を知らない子どもたち」。第二次世界大戦を経験してきた親を持つ戦後生まれ世代である。そんな彼ら大学生は意気揚々と、ナチス時代の看守や獄卒、あるいは「1945年以降彼らを追放しようと思えば出来たのにそれをしなかった世代そのもの(彼らの親世代全般)」を断罪したのである。しかし、その恥辱の刑に処せられるべき被告の中にハンナがいたことで、ミヒャエルは彼らの罪を単純化できなくなってしまったのだ。

彼は、ハンナの裁判を傍聴する中で、彼女の秘密を知ることになる。それは、彼や私たちにとって見ればごく些細な秘密だが、彼女にとっては最大の秘密だった。その秘密を告白すれば彼女の罪はかなり軽減される筈だったのに、結局はその秘密を守り通してしまう。重罪になるか微罪で終わるかということよりも優先される秘密とは何なのだろう。その秘密を人に漏らすことは彼女のアイデンティティの崩壊を意味し、彼女はまさにその秘密を守るために万難を排して生きてきてしまったのだ。何という誇り高く、愚かで悲しい人生だろう。

しかし、そんな風にハンナに思い入れて読むと、実はとても寂寞としたエンディングを迎えてしまう。
主人公のミヒャエルの行動が実に不可解だからだ。
彼は結局一度もハンナに手紙を書くことをしなかった。朗読テープを送りはしたが、個人的なメッセージは一言も入れなかった。後年、ハンナからの手紙を心の隙間を埋めるものとして感動して読んだのに、一行の手紙も、一言の挨拶も彼からは送らなかったのだ。

読んでいる間は、ミヒャエルのやり方を非常にもどかしく感じ冷たいと思ったのだが、あれは、実は彼に出来た最大のやさしさだったのかもしれない。と、同時にやはり最大の制裁であったのではないかとも思う。
ミヒャエルはハンナを無視すればよかったのかもしれないが、それでもかかわらずにはいられなかったのだ。
でも、ハンナはミヒャエルの言葉を渇望していただろうと思う。膨大な数の無味乾燥な朗読テープをくまなく聴いて、今度は、今度こそはと思ったに違いない。テープを聴く喜びと、聞き終わった後の失望感。制裁というなら、これほど効果的な制裁も無いのではないだろうか。

しかしながら、ミヒャエルも引き裂かれていたのだと思う。
彼女にどんな理由があったとしても、それがとても同情すべき理由でも、大量虐殺の片棒を担いだには違いないのだ。
今を生きる私たちには彼の気持ちを推し量るのは難しいところもあるのだけれど、彼の行動には深い葛藤があるのだということを考えなければいけないと思う。

もう一度読みたい作品。

 






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最終更新日  2008.10.27 00:17:50
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