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カテゴリ:今日読んだ本
天の光はすべて星 フレドリック・ブラウン著
フレドリック・ブラウンの復刊である。 1997年に始まり2001年で幕を閉じるこの物語は、実は1957年に書かれた作品である。アポロ11号の月面着陸の10年以上も前のこの時代に、こんなにリアリティと情熱を持って宇宙への憧れを描かれた事には驚きを禁じえない。 マックスは星にとり憑かれた人たちのこと(自分や仲間のこと)を星くずと呼んだ。 彼ら星くずは例え自分がそこで斃れても、あるいは技術的にそこまでしか足跡を残せなかったとしても、それを踏み台にして次の星くずが一歩前に踏み出すことを知っている。 私は、そんな宇宙に関する話や物語を見たり読んだりする度に、何となく生物の進化の過程を見ているような気持ちになる。宇宙へ踏み出そうとする人たちというのは、もしかして、人間の進化の可能性の最前線にいるんじゃなかろうかと思うのだ。 このマックスも、そんな星くずの一人として星へ向かう最後のチャンスに人生をかける。そのなりふり構わなさは、多少ダーティだし、何よりその性急さにはかなりの違和感を感じる。でも読んでいくうちに、何故マックスが生き急ぐのか、ひしひしと胸に迫ってくる。彼は自分が完全に老いるまでの残り時間と、プロジェクトが動き始めるまでの時間を計算していたのだ。ハイエナのように喰いつき、先へ先へ走ろうとするマックス。最初は引いていたけれど、いつの間にか心から応援していた。 そして最後は涙で文字がかすんでしまうほど泣いていた。マックスと星くずたちの友情に、マサイの賢人エムバッシに、愛するエレンに。そして、次なる幼き星くずに。
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