お子様ランチの味
小さい頃、母とバスに乗ってお出かけすることがありました。隣の隣の街まで行くことが多かったのですが、その街へ入るとやがてバスの窓からデパートの屋上にある遊園地(ちょっとしたスペースの)が見えてきます。それを見るといつも私はテンションが上がりました。そしてそのデパートへお買い物へ行く、というのがいつものお決まりのコースでした。お昼にはそのデパートのレストランでお子様ランチを食べる、これもお決まりでした。チキンライスと小さいハンバーグ、それからプリンがついてきました。その味がいかにも都会の味がして、私はとても大好きでした。 大人になるにつれて、母のことをいろいろと知るようになりました。お姑さん(私の祖母)との関係や、父とのこと、仕事と家事・子育てを両立してきた大変さ。子供の頃にはわからなかったことです。娘の私から見ると、母の人生はあまり幸せそうには見えません。現在でもまだ、いろいろと縛られて苦労しています。あの頃のあのお出かけは、母の唯一の楽しみだったことに最近気がつきました。仕事がお休みの日、私をお供に、母は少しでも家から逃げたかったのだと思います。おいしそうにお子様ランチを食べる娘を見て、母は小さな幸せを感じていたのかもしれないって、私も母になり、そう思うようになりました。私も時々逃げたくなる時があって・・・母の気持ちとダブってくることがあります。悩みの種の種類は違うけど、家の中には逃げ場がない、これは母も私も同じ苦痛であったと思います。こういうことの積み重ねで、親にもっともっと感謝ができるようになるのだと思います。