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彼のCHATは天才だった。気品ある文体は詩だった。
彼女は突然あらわれた こんにちわ えりかさん それですべて決まった。 僕たちは土曜の午後の理科準備室で、群集心理の実験をしていた。 あるCHATで、どれだけの、瞬間入場者数を出すかということだった。 サーバー管理者からは迷惑な話だったろう、 しかし、そこに、なぜ人々が集うのか? 「高田、そろそろやばくないか」 「うん」 入場者は500人を越えている。 「このままいくと、落とされる」 「人形をへらそうか」 「うん50減らそう」 実際の入場者は400人程度だった。 高田は人形を自然に減らした。 高田はそういった仮想現実の天才PGだった。 吉池が今日もMOVETRACKのシステムを顔や全身に200個つけたまま、理科準備室のいすに座っている。 「足組み替えてみな」 DIRECTOR格の裕介が行った。 「氷の微笑みだなあ」 吉池は男のくせにまだ地元のバレー教室に通っている。彼は時給300円で高田に雇われた女役だった。 しかしそれもAGENTかもしれない。 「おい、なにやってんだよ」モニタしていた裕介が言った。 モニタにはやばい姿のネットアイドルがいた。 「おれじゃないよ」吉池が怒鳴った。 「やられてる」高田が言う。 「だれかが、俺になりすましてる」 「一度おとすしかない」 「IP抜かれるぞ」 ドアが開いて、物理の青木が蒼い顔をして立っている。 「おい、裕介、県警から電話だそ。お前ら電源落とせ」 僕たちは2週間の停学中も、同じ実験を、自宅からしていた。 もっとも、ねえちゃんと、同じ部屋の吉池は参加できなかったのは言うまでもない お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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