カテゴリ:だから
「あなたといると素直になれたのに、変ね」 「こまったなあ」 この女に与えるものはなにもなく、抱きしめる以外、なにもしてあげられないことが、男の気がかりだった。その懸念はいずれにしろ噴出すことになる。彼は若いだけで、その長い時間を持てましていたのは彼女だけではない。 たしかに人は一人で生きているわけではない。しかし、その愛の代償は痛ましく苦痛に満ちたもので、恋の喜びに比べれは、奈落の底に落ちている不如意な状況に、彼は思っていたが、どう彼女に伝えてそれがどう変化すいるのか、想像できなかったので、そのことは話せないでいた。もしかすると、これはあいではないのかもしれないという疑問符を、封印して、なんとなく平穏な日々が過ぎている気がしていた。 彼女はそういった彼女自身のストレスの中で、次第に変化していく、彼をごく当然のものとして扱い、すこしづつかろんじていた。 すなおになれなくなった彼女は、彼になにかみちたりない、次第に大きくなっていく、わすれていた、日常の、シンデレラ願望が、ふきだしていくのは、彼女の不幸な境遇の、幸せならばこそ、求めて当然のことだったに違いない。 「ねえ、貴之はなんで免許とらないの?」 「とればいいの?」 「うん」 「ねえ、貴之はなんで車もってないの?」 「免許もってないからねえ」 「じゃ車もてばいいよ」 「そうだね、なにかいいかなあ」 「Cの子ベンツがいいよ、赤いやつ」 「そか、じゃ、ヤナセの人に見積もりをたのんでおこうか」 「うん、で、いつ買うの?」 「・・・・」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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