カテゴリ:幸せな愛
慎重に言葉を選ぶ癖を責めるわけでもなく、佑介の健康を気遣いタバコをテーブルの向こうに移動させた。 春奈の意図が見えない。これほど大切にされながら、不在な夜に存在している。佑介の中に彼女はいたはずだった。 偶像崇拝ならそれでいい。春奈は佑介を落胆させた経験がない。 その存在は受け入れていく。拒む必要がない関係。溶け込んで寛容な慈しみに包まれる感覚に襲われる。喜悦を彼女は与えている。 彼のDNAが彼女を選んでいる。それは体でなく感情でなくなにかしら仕掛けられた予定のように思えた。遭難者がポケットのチョコレートを食べるように、少しずつ彼女の記憶を反芻して、彼の夜は静かに過ぎていく。 もう三週間も逢っていないのに昨夜の出来事のように思える。 抱きしめたい気持ちが突き上げてくる。ひらりとかわされるのか、躊躇う。 純愛の時代ではない、感受性が彼女を求めている。 ありきたりの現実に二人存在したくない。 このあたらしい形は普通の恋心に比べると心もとない感じさえする。 彼女にメールを打つ、5分おきに新着メールなしのメッセージがDISPLYの片すみで申し訳なさそうにリライトされるのをみながら。
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Last updated
Apr 21, 2006 02:11:45 PM
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