カテゴリ:だから
夜更けの環状線を車は走っていた。なにも云わないで、心を探り合っていた。
傷つくのがいやだから、相手の真剣さの深さを測っている時間。 わからないことばかりで、このまますべてを知らないままがいいと思った。 すべて現実感が無かった。祐介はこれは現実ではないと考えていた。夢だった。 彼女の様子が頭をかすめる。さめるのがいやだった。 夜明けまで数時間になって、ようやくあきらめた。帰りの車の中でこみ上げてくる記憶のリアリティがいい感じだった。 本当のことは二人とも知らない。美樹と別れたと云っても、彼女は確信が持てない。 心の嘘を、すこしづづ変わっていく二人を見ている。 つよくしないで 理性的にして 誰が理性でキスをするのだろうか。抱きしめる腕に、思いもよらない力がこもっていた。いったいなにを伝えようとしているのか。彼女は考えていた。いつものことなのか。 これは愛情表現なのか欲望の発露なのか。やがて自分自身が欲望を抑えきれなくなっているのに気づく。いったい誰をどんな風に愛して愛されていたのか。 別れて二日目にこんな状態の自分が信じられない。 初めて祐介に会った夜、抱きしめられて胸元にキスされた。 次の朝、男と別れることを決めた。恋に落ちたから。 最初の夜、結婚しているか聞いた。二回目の夜、出身大学はどこか聞いた。三回目の夜、友人にあなたのこと自慢したと言った。 二人はいちゃつくのに忙しくよく話しをしていなかった。 あっている時間ほとんど少年と少女の様に飽きることなく抱きしめてキスばかりをしていた。もうこれ以上傷つくのはいやだった。別れるのも、憎しみあうのもいやだった。 二人は計画的に淡い恋を引き延ばしている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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