カテゴリ:だから
僕はまだ16才で、夜の月の国道を、自転車にまたがって、きみにあいに出かける。ダウンタウンへの道はなだらかなカーブで、麻布十番を潜り抜けるころには、もう僕の頭の中は、きみのからだのことでいっぱいになっていたが、まさに僕はそういったガキだったわけで、見境のない深夜の行動は、近所の評判になるばかりでなく、自暴的にきみに会いにでかけることを繰り返していた。
きみはなんでドアをあけたままだったのだろうか。 そんなものは愛ではなく、むしろ君でさえ、暇な高校生活の気晴らしのような時間を、勉強で疲れて家族の寝静まった深夜の、静粛な愛の時間だったのかもしれない。 それをとめることはなにものもできなかったが、終始、ブレーキを踏みっぱなしだったのは僕のほうだったのかもしれない。 きみはまだ16才で、気の遠くなるほど退屈な日々をすごしていたし、あまりうまくならないテニスにも、飽きてきてたはずだった、あるいは僕にも。 僕は僕で、なぜきみなのかわからないまま、自転車はきみのマンションへと、ハンドルをきっていた。 月夜の窓辺のBEDでその光にてらされた君のキスを受けるだけで、むしろ僕は人生の目的をすべてはたして、明日からの無意味な残りの人生にうんざりする感じにおそわれたが、その通りにあの深夜のキスの月ほど美しいものはなかったし、たしかにそのあとの僕の人生はうんざりするほど退屈なものだった、きみにあうまでは。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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