カテゴリ:だから
アシュケナージのショパンを聞いていた深夜に、雨音の調べがかさなって、かの女は出窓を開けた。しめやかだけれども深い雨が降っていた。
翌朝どんよりとした気分で目覚めてシャワーを浴びるときに、あなたのことを思い出した。 週末の約束のないちゅうぶらりんの午前中、屋上の眺めを眺めた。 京都タワーから金閣寺にむけてそれは出ていた。 巨大な京都を覆いつくして、その虹は出ていた。 かの女は水遊びした夏の午後の、芝生の庭に、ふと見えた小さな虹のことを思い出していた。遠い記憶のなかで、その愛らしい虹は、いつしかかの女の心に住み着いていた。 暑いといってあなたはシャワーのように、そのTシャツのたくましい体の、水に濡れた様子に、夜の睦言を思い出してかの女はひそかに逡巡した。 京の遅い秋は、すさまじいはやさで、やがいてその冬を迎えようとしていた、あなたのいない初めての冬を。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Dec 23, 2006 09:58:09 AM
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