カテゴリ:だから
雪は降りそそいで、そのパウダーの舞いちる景色を、きみはぼくの部屋でしばらく眺めていた。 「わたしたち、どうなるのかしら」 きみはそういった曖昧な明確さで、ぼくの真意を確かめようとする。 「わたし、帰るね」 きみはぼくのもとを離れ、いったいどこに帰るというのか。 きみのいなくなった部屋で、ぼんやりとした時間を過ごす。きみとすごした時間の、夢のように感じられるきみの気配や、その息遣いの、粉雪のようなせつない甘さと切なさを、ひとり思った。 ベランダに出ると、手すりの上に、ちいさな、10センチほどの、雪だるまと目があった。 ふと涙があふれてきて、きみの手をはなしたなら、それはぼくのたぶん一生の後悔になるような気がした。雪はやみそうもなく、雪だるまとぼくは、ベランダで永い間、みつめあっていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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