カテゴリ:だから
「名前は、あの夏の思い出と、忘れてしまいました。街ですれ違ったとしても、もはや気づくことも、振り返ることも、ないでしょう。」 「あなたの胸に、彼女はまだ棲んでいるの?」 「胸をひらいて、おみせできるのなら、わかっていただけるでしょう」 「こころはどこにあるの?」 「こうして、この時間がすべてでしょう」 「愛しているという嘘をかさねて、あなたは悲しくはないんですか。」 「それは、嘘でなく、たしかにそこにあった、愛のようなものだったのです」 夜明け前にみた夢の記憶の中のあなたは、薄明かりの微笑みで、どうしてこんなことになったんだろう、むしろそれを望んでいたのは、私だったのだろうか。 「あんなに愛し合った後で、もうだれも愛すこともないと思いました」 「でも、私を愛しているのでしょう」 「それは、きみがきめることです」 「愛しているといって」 「それは、いえない」 「・・・・・」 「でも あなたの優しさは、氷の中の薔薇を、いとも簡単に取り出してしまった。わたしは、むきだしのこころのまま、あなたに抱擁されている、無防備な表情のままで。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Feb 8, 2007 05:43:20 PM
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