テーマ:☆小説をかきましょう☆(102)
カテゴリ:だから
京都にくらして、暦の上では三年になる。
旅人として訪れていた京都は、同行の女がいつもいたが、今回は職業上の理由で、移住してしまったために、京都で出家僧のような暮らしを、足掛け三年していることになる。 外出することのない日々に、出会いはなく、恋に落ちることも、愛されることもなく、ただ、私は京都という特殊な都市に愛されて、この都市を愛している。 東京は狭すぎて、米国移住を検討していたころのオファーで、京都という場所は、女とおとずれるノスタルジアな側面で傍観していたにすぎなかったのだが、いまとなっては、京都にいることが、どうも実感できないのも、なぜか不思議に思わなくなってきている。 東京に帰らなくてはいけなくなる夢をよく見る。過酷なストレスまみれの、夜な夜なの酒席なしで、その生活をたえていくことはできない。その生活にもどるのか? 金閣寺をぼんやりとながめて、夕暮れの三年坂をふらふらと祇園に歩いていくと、夜の女たちは優しい。しかし、彼女たちの視線は、やがで東京にもどってしまう男の位置に、私がみえているのかもしれない。 彼女たちはこの京都を、離れない、そしてその女と恋におちたなら、私もこの京都をはなれられなくなる、かもしれない。 東京につかれたときの、気休めの旅先として、京都に訪れて、そして東京にかえるような、トランジェットの滞在のような、気安さはそこにはない。 さて、だれか、わたしと、この古都をあるいてくれないか、あのころのように。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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