都合のいい男
at 2004 02/27 11:01 編集
彼は聞かれた
「あなたのメリットは何?」
いい質問だと思った。
「あなたの価値観を本来のあなたに戻してあげるよ」
「なにそれ」
「あなたが欲するのを満たすのは、ほんとうはあなたのためにならない」
「なにそれ わかんない」
「あなたが欲する原因を取り除いて、あなたが欲しないようにしてあげる」
「なんになるの それ」
「きみがきみだったころに、もどるだけさ」
「そう、、それっていつ頃?」
貴之はうつむいて小さく言った
「あなたがはじめて愛される前さ」
由紀にはなにも理解できないだろう。
代償行動に満足はなく、本来欠如しているものを充溢するか、その欲望自体を消去してしまう必要がある。
「それがわたしを抱けない理由なの?」
「違うさ」
「どう違うの」
「それはきみをたいせつにしてるだけさ」
「信じられない!」
証明する必要のあることは、それ自体が問題で、証明によって現実に存在するか否かは、彼女たちにとって大した問題ではないのかもしれない。
貴之はこの恋の終りを感じ始めていた。