カテゴリ:だから
その編集者は女優を恋人にもつその男と銀座のバーで会った。 「小説を書いていただきたい」 「原稿依頼ですか」 「そうです、恋愛の小説をお願いしたい」 「私は小説はだしたことありません」 「あるがままを書いてください」
その女優との恋愛の顛末は有名な話だった。 やもすれば暴露本の類だが、その編集者は文芸の人間だった。
「なぜ私に依頼しようとおもったのですか」 「つねづねお書きになった文章は拝見しております、小職が編集をさせていだだきたい。それは、百万部を想定でき、映画化し、一世を風靡することになります」 「代理店がらみですか」 「代理店は小職がうごかします」 「すこし考えさせてください」 「わかりました」
男は困惑した雰囲気のまま 黄昏の銀座の露地に消えた。
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Last updated
May 28, 2007 03:38:26 PM
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