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彼は出て行った女の残した愛の残骸を整理した
彼は身の回りのお世話をしてくれる人間を失った ふと 孤独がそこにいてくれた 孤独と二人だった 愛は通じなかった 好きになったひとは友達でいようといった 彼はなにかに変容しかかっていた 夜明け前のリビングルームで詩を書き続けた 同情はやがて母性的な愛情に変わり、彼が求めるまま彼に体をあたえた 母にあいされなかったなにかを、だれかにもとめているのか 「たかゆき まざこんでしょ」 「コンプどころじゃないよ まざPTSDだよ」 「女の母性なんかむちゃだよ」 「でもなんかそんなかんじだねえ」 「いま母性のある女性ってやっぱ地方じゃん」 「じゃ 旅にでるか」 実家から野菜が届いた。黒猫のドライバの高田はぼくが別れたことしってた。 「こんどさ、彼女紹介するからさ」 「そうすか、ちょっとお疲れですよ」 「うん、わかる?ちょっと海外にでもいってこようかな」 「東京にいたら休みにならないでしょう」 「そうだね」 「いま銀座だけど、出てこない?」 「15分で行くよ」 「いま六本木だけど、でてこない?」 「20分でいくよ」 彼は招待されたPARTYすべてに出席した。 朝焼けのマンションに帰る。コンピュータがメールの着信を知らせている。 携帯に転送しない人からのメール。 携帯からしか送信できない女たち。 捨てメールアドな関係な人々。 電話番号だけしかしらない人々。 貴之はBEDROOMに行く。 「もうおうちついたかな、たのしかった、おやすみ」 お礼のメールが入る。 このBEDに何人女が寝たのだろう?あのソファBEDをいれると、、 寝るってどういういみなんだ? 午前四時五十七分 あと三分で女の体なんか欲しくなくなるくせに そこに孤独が立って彼をみている。 「やあ」 「寂しいだろう、祭りのあとは」 「そうだね」 ぼくは1時間だけ眠ってシャワーを浴びて、PROJECTROOMに行った。 「おす」 「うい」 「おつかれっすね」 黒澤が冷やかしてる 「まあな」 「無理はいいですが、無茶はいけませんよ」 「おう、お前はいいやつだ」 「そうでしょ」 「これで仕事ができればいうことないな」 「ちょっとサーバールーム行ってきます」 また夜が来て、 食事のメールから適当な女を選んで、 彼女のREQESTに対応する。 いいかげん だれか 俺を愛してくれ!! 深夜に彼女の着信履歴に気がついたのは、クラブのはねた時間だった。 不意に彼女は出た。 「おなかすいた」 「え 晩御飯食べてないの」 「電話待ってた」 「そか、僕金ないよ」 「いいよ私出す」 「うん」 僕たちは台風の夜事に、神屋町の深夜営業のレストランでMTGした。それは口頭試問で僕が彼女の育て甲斐のある男かどうか検証されていた。 彼女のだした答えはしらない。 僕は自分がいやだった。見た目で判断されるのがいやだった。利用されるのがいやだった。 でも彼女は違っていた。瀕死の僕に気がついている数すくない人で、手を差し伸べてくれていた。それに甘えた。 僕たちはカラオケ屋で世の中が動き出すまで歌い続けた。 土砂降りの雨の中傘を持たない二人は、通勤の流れる人の反対方向にタクシーを走らせていた。 「どこまでおくればいいのよ」 「地下駐車場」 「だめ、ここで降りて」 「うん」 僕は土砂降りの雨の中歩いた。彼女の体など欲しくはなかった。彼女は自意識過剰なので、男はみんなそんなものだと思っている。別に僕の部屋にきても抱かれないで帰る女性はいくらでもいる。そんななにか僕の僕の知りえないなにかに怯えていた。 男と女がひとつの部屋にいてもなにもおこりはしない、僕は悲しかったし、ぜったいに何かおこしてやると思った。 クリーニング上がったばかりのグッチのジャケットはいまも無残に壁際に飾ってある。 ** 社用族のまだ現れないそのレストランは貸切だった。二人はブリュゴーニュから空輸された巨大なアメリカ人好みのサイズのオマール海老と格闘していたので、無口だった。高層階にある窓際のラブシートで、44歳の紳士と21歳の学生が地球一高価なオマールを食べている。 彼女はそういう関係だと世の中から思われていた。彼が25歳であったなら、彼のお嫁さんになりたいと思ったかもしれない。残念だが、それは生まれてくる子供たちにかわいそうかもしれないし、二回結婚をしている彼が、このあと何回結婚するかわからなかったので、それは怖かった。 だから友達でいたが、だれもそれを信じてはいなかった。 彼女は深夜に自分の部屋で、ママにみせられない彼にかってもらった紅茶を入れた。ママはそれに気がついていたが、彼女を信頼していたのでそのままにしていた。 彼女が銀座のホテルを出るところをママのお友達が見かけたが、彼女のママは知らない振りをしていた。 ママは大好きな人がいたが、事情があってお別れになった。彼女の娘にはそんな恋愛をさせたくはなかった。だから、彼女を信頼して、自由に若い時代を謳歌してほしかった。 オマールはうまかった。彼女はママにこれを食べさせたいなと思ったが、彼にはそれは言わなかった。ママが彼のことすきになるといやだから。 最後の電話をたたききって、わたしは大きな声を出して泣いた。BEDに倒れ込んで泣いた。 私のうざい部分は、こういったクリスマス前の年末年始のバケーションの相手を争奪する時間に、ストックしている愛のやさしさを、指折り数えていく金曜日に、男をあおったり、放置したり、切ったりしている。 結局今年の冬に北欧でスキーをする女はわたしではなかった。 彼は私の真心で満ち足りる男ではない。 女たちの献身や裏切りの中で、彼の周りで女たちが渋滞をしている。 結局クリスマスを彼と過ごすことはないのだから、私は彼に冷たくした。 秋めいた夕暮れのテラスでドンペリニオンをたたきつけた。こなごなになったガラスとシャンパンの液体が、ベランダを静かに流れた。 「夕べ、だれとどこにいたの?」 「きみは?」 彼は澄んだひとみで私を見つめている。 彼はガラスで指を切った。たそがれの終わった東京湾は、冷たい静けさにおびえている。 「電話したのに、なぜでてくれない」 「いそがしかった」 私は携帯を叩き壊した。 「これで気が済んだ?、私はあなたを愛しているの、どうしてわかってくれないの?」 「すまないが、かえってくれないか、来客があるんだ」 海蛍が遠景に浮かんでいるのが、急に滲んだ。私は泣きながらエレベータに乗り込んで、しゃがみ込んでしまった。そとに出るとはげしい雨が降り始めた。 「未来」 谷川俊太郎 (未許諾) at 2004 11/20 19:20 編集 たった今死んでいいと思うのにまだ未来がある あなたが問いつめ私が絶句する未来 原っぱでおむすびをぱくつく未来 大声で笑いあったことを思い出す未来 もう何も欲しいとは思わないのに まだあなたが欲しい *** 大切な未来を、育んでいったいどうなるのだろう。 「あなたは、あなただから」 そういう君のあでやかに開いたせなかの白さが眩しい強さで私を揺らしている。やがてふたりBEDに横になったまま、眠りについた二人が見る夢は群青色の夕暮れにふりだした雨に煙る街角。 言葉にしてつたわることの薄さを二人は噛み締め、なやましい吐息のふりかかる距離で確かめあう、なにを、なんのために。 どうかわたしをさみしくしないで あなたがいてほしいの わたしだけのあなたで わたしいがいを見ないで 君のひとみはそう言ってる 「あいしてるよ」 「かもね」 「あいしてるといって」 「はずかしいよ」 僕は彼女の胸元にひろがる、たわわな甘い果実のふくらみを、飽きもせず夜通し眺めて過ごした。 グレイの朝がきてもまだ僕たちは信じることができないでいた 「わたしたち恋人なの?」 「きみが感じるなら、そうだね」 もはやふたりはあともどりできない場所にいるのに、たくさんの恋人たちのように、そういったとりとめのない時間だけが流れている、穏やかに。 彼女からの折り返しの電話はなかったし、電波の届かないあるいは電源が入っていないというのも、私の携帯にはよくある話だ。 会議を終えて、午前2時のロビーで携帯に電源をいれるとプライベートなメールが5件、留守電が7本蓄積されていた。いきなり私はその電源を落として、理恵の部屋のPCが起動しているかどうかを確認した。起動していないように見えたが、見えなくしているような気がした、私は彼女のマンションに行くことにした。 深夜の首都高は途切れがちな対向車のライトの河が緩やかな傾斜のカーブの中で、うつろに感じていた。私は理恵とわかれる理由を探していることに愕然としていた。理恵を喪失する苦悩に耐えられない現実に直面することを排除しようとしている。 彼女の部屋にいる男のイメージが苦悩なら、私の部屋の女の気配に苦しむ理恵は想像の外側の安全地帯なのか根拠がない。 彼女が私を支えることはできない。それを率直に彼女に伝える必要がある。それが私に残された誠意の形なのだろうか。 「私」を「私」たらしめ、一貫性、同一性を与えているものは何か、ということへの意識、自己確信がもてない以上、その確認作業を彼女に委ねることは危険だった、すくなくとも私にとって。 彼女を愛していることの現実を理解させようとしている欺瞞に憤りを感じるのは、ほかでもなく理恵自身なのは明白だが、彼女との肉体関係がないということが二人の意思伝達を複雑化している。 私は彼女が抱き気がないのか、彼女が私を抱く気がないのか明確にする必要があった。いくつもの夜を重ねても答えの出ない、とりとめのない不毛な、そういった私の人間性の理恵の精査の行為が、愛しているということの現実に夥しい苛立ちを感じている。 私は理恵のいない人生を検討せざるをえない。 南青山は雨になっていて、激しい風が吹いていた。タクシーの窓を開けて吹き込む雨を頬に感じながら、いつでも抱ける安易な都合のいい女の立場に理恵を置き去りにしている自分の不誠実さを私は感じていた。 私は彼女を愛しているとは伝えたことがあるが、彼女に結婚しようとは言っていない、すなわちその意思がないと彼女は判断していると認識した。 やはり理恵は私を愛していないのかも知れない。そういった疑義が彼女の信頼を得ないし、彼女の個人的な行動に関して不安定な脆弱さを感じる、彼女は私に相談などしないから、そのことが寂しいなかなと、自身を感じた。 彼女に会えたなら彼女が欲しいという感情を伝える必要があった。自分の感情を抑えるのに疲れ果てている、異常な疲労感が私を襲っている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 28, 2007 09:50:14 PM
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