カテゴリ:だから
彼女が焼肉を食べたいとメールすると、送迎の車が彼女のマンションに止まる。 彼女がピアジェのアンクレットが欲しいとメールすると、それは届く。 彼女が体がほしいとメールすると、どんな男でも現れる。 彼女が京都に行きたいとメールすると、メルセデスは夜の高速を走る。 気分でモニタした留守電で、なにかしら楽しいものだけにメールする。 話すことさえうざかった。声が聞きたい男は電話してこないし、電話しても留守電だった。
祐介はなんのために携帯を持ってるのかわからない男だった。彼は留守電さえきいていない。たぶんだれかから、かかるのを待っているのだろう。理恵はその女を羨望した。 彼女がどんな誘惑をしても、祐介はおちなかった。 すべてほしいものは手にいれた、祐介以外は。祐介は理恵にわずかな時間以外なにもあたえなかった、メールでさえ、渡したメアドにいちどもくれたことはなかった。 祐介を愛してるのは事実だったが、好奇心にすぎないことを彼は理解していた。 「ねえ この電話切っていい?」「いいよ」 その始めての電話以降二度と祐介は電話してこない。理恵は手に入らないから、祐介を愛しているし、わたしのからだを欲しがらないから、祐介は理恵を愛しているにちがいないと確信していた、彼が我慢していると考えないとさみしかった。 彼はモデルや売れない女優を引きずりまわしながら、愛を探していた。そんなものどこにもないのに。「いまどこ?」「田町だよ」「いま銀座なの、いっていい?」「ごめん、来客だから又こんどね」「はーーい」 そんな短い会話 彼女たちはむかついていた。どうやら彼は一度寝た女と二度と寝ないらしい。なぜなんだろうと理恵は考えていた。 祐介もほしいものなどなかった。彼女たちが彼を愛する理由は、ハイアットの食事や、彼の車や、彼の容姿や、ひりひりする会話が目的だった。彼女たちは、祐介の女だと西麻布のクラブで思われたかったのかもしれない。彼はクラブには姿を見せないが、そこはそういったゴシップで満ちていた。
彼のマンションの地下駐車場から、酔ったふり、眠ったふりの、政治経済学部の、トヨタのキャンギャルが、彼のフロアで、げろを吐いて、その朝方、彼に抱かれたが、キスされなかったらしい、、などといった、真実めいた話がかわされていた。彼に夢中になった千駄ヶ谷の女医志望の広尾の女子学生は、お熱のあげすぎで、二浪になった、、、彼の部屋で彼のひざに乗ったことを言いふらしてる、横浜の高台の英文科の子は、3歳の時の話だということだった、、そういった本人でさえしらない情報がかわされている。 彼は小学生時代にもはや女の子に追い掛け回されていたし、中学時代には教生にきていた短大のお姉さんが、彼の部屋に黄色いミニスカートをはいて遊びにきたらしい、彼女は銀行に就職して、御見合いして、彼とは結ばれなかったらしい、真実はわからないが。しかし、13歳の彼の部屋になぜ教生の短大生がミニスカートで来るのか理解できなかった。 彼が高校の頃は、同級生が妹たちが彼のおもちゃにならないか心配していた。「おい、うちの妹に手をだすなよな」「おまえ、妹いたっけ」 彼はロータリークラブのPARTYで知り合った中学生のグループを自宅に出入りさせていた。時折、5,6人の小娘を連れた彼を自宅の近くでみかけられたらしい。 中学時代の女のコたちは、高校になると、競って彼の家に出掛けていた。だから、彼はやたら来客の多い高校時代を過ごしていたが、ほとんど自宅に招待していた。彼の母はそんな来客に御茶とケーキや肉まんを用意した。 めでたく、彼の家のひとびとが旅行中の場合、そのかわいい自転車は、となりのおばさんに告げ口された。「ゆうすけさん、こないだも、ガールフレンド自転車が夜どうしあったって、前の吉野さんの奥さんがいってたわよ、お泊めするのはいいけどちゃんとご両親には本人が連絡してるんでしょうね」「たぶんね」 つまり彼は高校時代に大学のおねえさんや社会人の綺麗なおねえさんにある程度飽きていた。同時代の男のコより6年くらい早い早熟な青春をすごしたようだった。
理恵は彰子からそのような彼の情報を得ていた。 この男を自分のものにしてやると彼女はかんがえていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jun 5, 2007 05:16:02 PM
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