カテゴリ:だから
僕は誕生日は休暇にすることにしている、1991の誕生日の勤務中にむごいトラブルに巻き込まれて、もう一生誕生日に仕事はすまいと思っていた。
しかし世界はそれを許さないこともある、休暇中に携帯電話は容赦なく鳴り出す。 一般的に誕生日は非常に大切なものだが、僕の記憶のなかでその日が素敵だったのは、90年代前半にさかのぼるしかない。 いやおうなく誕生日の休暇に仕事が入って、いやおうなくシステム部のサーバーのうなりの中で、僕は彼女たちの、つまりサーバーという物質を僕は愛してい るのだが、彼女たちの情緒不安定な気分をとりなしたり、体調のすぐれない彼女たちの僕は専属ドクターだった。彼女たちは128台いたし、その端末5000 台もことと次第によっては、僕になにかしらの判断や、調整を強要した。つまり、彼女たちは非常に限界まで仕事をしてくれるので、そういったSOSは、日常 的に僕を必要としてくれていた。 その数千台のCOMPUTERを販売したのも僕だったし、なんの因果かしらないが、彼女たちの面倒を、僕がみていた。 前置きがながくなったが、その誕生日に僕が仕事から開放されたのは午後11:00を回っていた、TAXIがマンションの地下駐車場について、エレベータを待っているとき、彼女から電話が入った。 「いま、どこなの?なにしてたの?」 「いまマンションの駐車場のエレベータを待ってる、さっき仕事おわったところ」 「今日、なんの日かわかってるでしょ」 「うん、」 「なんで、携帯つながらないの?」 「携帯つかえない場所にいた」 「すぐ、でてきて」 「どこにいるの?」 「六本木」 「今日はムリだ、つかれてる」 「いつもじゃない」 彼女は気丈で聡明な強い女だが、その声が涙声に聞こえたと同時に、電話が切れた。 僕の前のエレベータが開いた。僕は、迷っているのに気がついた。 彼女に僕はふさわしくないのかもしれないと。 多分彼女は銀座あたりで僕がのんだくれていると、あるいは、そういった成熟した女性を同行させて、このマンションの駐車場にいると、多分思っている。 僕はため息をついて、そのエレベータに乗り込み、15Fのボタンを押した。 僕のフロアにエレベータがとまり、ドアがあいて、僕は息を飲んだ。 ピンクのおおきなリボンを頭の上にのせた、その彼女がエレベータホールにたっていた。そしてこういった。 「お誕生日おめでとう、愛してるわ」 、、、。 中庭の吹き抜けの20階までのそのエレベータホールで、僕は、抱きしめられた気がした。 しかし、それは幻で、折からの雨は、雪に変わって、その吹きぬけを、音もなく、細雪が舞い落ちていただけだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jun 17, 2007 11:18:51 AM
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