カテゴリ:だから
「なにかいった?」 きみはふと、こころの声をきくことがあった。 ためらうのは、誤解をおそれるばかりでなく、真意が、言葉でつたえられるか、ということだった。 ふと僕はだまりこんでしまう。 「また、無口な饒舌ね」 顔を見ると怒っているふうでもなく、視線を気にしないで、壁を見つめている。
真意とは、なんだろう。 僕はそれを考えていた。
むしろ、この食事の雰囲気を、どうにかする立場に、追い込まれている。僕はそういった状況に、過敏に反応することなく、もくもくとスープスプーンを運んでいる。それは冷たいパンプキンの、十分に裏ごしされたなめらかなもので、そのアメリカンレストランの、大きなスープ皿というより、スープボールに近い状態の、繰り返し、スプーンを口に運びながら、僕はその冷たさを感じなくなってきていた。 彼女の真意を、その壁面の眺めに、熱心なことに、はかりかねている。 僕は彼女に伝えるべき真意というもので、その不機嫌な食事を、どうにかなるものでもないことを理解していたし、いかんともしがたい苦痛の雰囲気のなかで、家に帰りたいような気分になっていた。 致命的なことに、彼女の不機嫌の理由が、どの地雷だったのか、多すぎた饒舌の、いったいなにが、その心をきづつけたのか、わからないまま、依然サラダボールのパンプキンスープは、なかなかその底をみせてはくれなかった。
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Last updated
Sep 12, 2007 01:19:07 AM
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