東急電鉄と電力供給事業
2016(平成28)年4月1日に、家庭向け電力小売り自由化(いわゆる“新電力”制度)がスタートする。これまで東京電力や関西電力などの地域ごとの大手電力会社からしか買うことができなかった一般家庭向けの電気を、これらの会社以外からも買えるようになる。この“新電力”事業に、それまで電気とは無縁だった異業種からの新規参入も多数発表されている。鉄道界からは、東急電鉄が子会社、東急パワーサプライを設立して“新電力”事業に参入する。この度東急パワーサプライの詳細な電気料金・サービス内容が発表され、東急カードでのクレジット支払いの利用、イッツ・コミュニケーションズのケーブルテレビ・インターネットサービスの利用、そして東急線を含む区間の定期券の利用している人がいる世帯には、値引きや東急ポイントを付与する。利用しているサービスが多いほど、値下げ幅が広がる仕組みになっている。東急パワーサプライは、関東地方各県と山梨県、静岡県の一部を供給エリアとすることが発表されているが、前述の特典の内容から、主に東急電鉄沿線在住者向けのサービスとして提供されることが見てとれる。実は東急電鉄はかつて自前の発電所を持ち、沿線の街に送電していたのである。これはもともと東急電鉄の母体となった田園都市株式会社が開発した住宅地である洗足および田園調布に限定して電力を供給していたもので、洗足は富士瓦斯紡績、田園調布は群馬電力(共に後に東京電力と合併)から購入していた。また世田谷線の前身である玉川電気鉄道が、当時の同社の親会社であった東京信託の手により桜新町に開発された住宅に、電車を走らせるために造った発電所を利用して電気を供給するために兼業として始めたものであった。当時、電化路線を持つ鉄道事業者が自前の発電所を利用して、沿線の街への電力供給を兼業することが珍しくなかった。玉川電気鉄道の電力供給事業は沿線から離れた地域にも行われ、東横線の前身・東京横浜電鉄が開発した住宅地の多くへも送電していた。このことに黙っていなかった人物が、当時田園都市株式会社の子会社の1つで、現在の東横線の前身である東京横浜電鉄の専務取締役であり、のちに東京急行電鉄の社長となる五島慶太さんであった。五島さんは鉄道単体だけではなく沿線の街の開発と一体で鉄道会社を経営することの必要性を認識していたことから、自社で開発した住宅への電力供給事業を自分のものにしたかったために、半ば強引に玉川電気鉄道を買収したと言われている。かつてのように、再び沿線エリアを中心に電力供給事業に参入する東急電鉄が、これまで以上に、鉄道の枠を超えた「総合サービス企業」として、沿線の街に密着しながら成長していくことに期待したい。In Japan, on April 1st, 2016, the electric power supply for homes liberalized; you can select your provider not only from the area-by-area suppliers such as Tokyo Power Electric Company in Tokyo or Kansai Electric Power Company in Osaka.Tokyu Power Supply, a branch company of Tokyu Corporation, enters the business on that day and the rate was announced in January, 2016. Though the company is going to start its business in Kanto area and Yamanashi, Shizuoka Prefectures, the privileges for the users paying the electric bill by Tokyu's credit card, using ITSCOM cable television or Internet access service, or having a commutation ticket on Tokyu Lines were also announced. The more service uses, the more bill reduce or the more credit card points you can get.In the old time, about 90 years ago, the late parent company of Tokyu, Den-en-toshi Corporation, supplied the power, generated by Fuji Gas Spinning and Gunma Electric Power Company, both of which are the of Tokyo Electric Power Company, for the residential areas developed by the company in Den-en-chofu and Senzoku. In addition, Tamagawa Electric Railway, the former operator of Tokyu Setagaya Line, supplied the power to residential area in Sakura-shinmachi developed by its parent company, Tokyo Trust, as a side business to use its own plant for the power source of the train effectively and the business area gradually spread to mainly in present Setagaya-ku and Meguro-ku, Tokyo, including homes along Toyoko Line. The substantive manager of Tokyo Yokohama Electric Railway, a branch company of Den-en-toshi and former operator of Toyoko Line ,Keita Goto, didn't silently overlook that fact and acquired Tamagawa Electric Railway to get the power supply business because he realized that railway business needed the development with a broad view, comprehensive and unified development both the towns and the railway.I am looking forward to growing Tokyu as a company supporting passengers' life over the railways.参考文献 Reference (All Japanese)「土地の神話」 猪瀬直樹「郷土誌 田園調布」 田園調布会「世田谷たまでん時代」 宮脇俊三・宮田道一