今から十数年前 トルファンは
ある日を境に 一匹の毒虫になってしまった
仕事に行かずに 自宅に引き篭もってしまった
朝 起きて身支度を整え 玄関に向かうけど・・・
玄関のドアの前で立ち止まり 部屋に引き返してしまう
そして ゲーム機器の前に座り 電源を入れる
やり尽くしたハズのロールプレイングゲーム
歴史シュミレーションゲームを 何度も 何度も 繰り返す
まるで それが 今すべき仕事であるかのように 真剣に・・・
パリコレ 東コレ等
華々しく輝いていたトルファンの会社 ( ファッション・アパレル ) は
輝きを失い 衰退し 座礁したも同然だった
そして トルファンは 現実逃避してしまった
ある日の朝 トルファンは 煙草とコーヒー豆を買う為 久し振りに外に出た
薄暗い部屋で 現実逃避して ゲーム三昧で
トルファンの目は とても弱っていた
外に出て まともに 目を開く事すら苦痛な自分の目・・・
その目の痛みを知ったと同時に
トルファンの頭の中に カフカの 『 変身 』 が浮かんだらしい
部屋に戻ってきたトルファンは 唐突に私に言った
なぜ グレゴール・ザムザが 毒虫になったか わかった気がした・・・
まるで カフカの主人公を 体現した気分だよ
一瞬 WOW 俺 凄い って 思ったけど
でも すぐに 俺 バカじゃないの って思った・・・
上手く言えないけど・・・ 毒虫のような自分じゃぁ・・・
俺は 前に進まなきゃいけないんだ・・・
もう大丈夫・・・ 明日から また頑張るから・・・
2週間も 会社をサボって 家で ゲーム三昧したトルファンは
再び 社会と向かい合い 歩き始めた
今からもう十数年も前の話
トルファンは カフカの 『 変身 』 を正しく理解した訳ではない
でも カフカの 『 変身 』 を1つの触媒として
トルファン自身の人生と向かい合い 受容れ 愛する事を自覚し実行した
本屋さんで カフカという文字を見ると
トルファンの現実逃避の2週間を想い出す