映画「太陽と月に背いて」をこきおろした以上、
私は理由を書かねばならないわね。
ポール・ヴェルレーヌの代弁として、
アホなレビューを書いてる貴方のお相手をしてあげる。
まず、貴方が読んだ詩、
彼の代表作と言われている詩
Chanson d'automne
( Paul Verlaine )
Les sanglots longs des violons de l'automne
Blessent mon coeur d'une langueur monotone.
Tout suffocant et blême, quand sonne l'heure,
Je me souviens des jours anciens et je pleure
Et je m'en vais au vent mauvais
Qui m'emporte deçà, delà,
Pareil à la feuille morte.
秋の歌
( 翻訳 堀口大學 )
秋風のヴィオロンの節ながき啜泣
もの憂き哀しみにわが魂を痛ましむ
時の鐘 鳴りも出づれば
せつなくも胸せまり思ひぞ出づる
来し方に涙は湧く
落葉ならね身をば遣る
われも、かなたこなた 吹きまくれ逆風よ
落葉
( 翻訳 上田敏 )
秋の日の ヰ゛オロンの ためいきの
身にしみて うら悲し
鐘のおとに胸ふたぎ 色かへて涙ぐむ
過ぎし日のおもひでや
げにわれは うらぶれて ここかしこ
さだめなく とび散らふ 落葉かな
秋の唄
( 翻訳 金子光晴 )
秋のヴィオロンがいつまでも すすりあげてる
身のおきどころのない さびしい僕には、ひしひしこたえるよ。
鐘が鳴っている 息も止まる程はっとして、顔蒼ざめて、
僕は、おもいだす むかしの日のこと。
すると止途もない涙だ。
つらい風が僕をさらって、落葉を追っかけるように、
あっちへ、こっちへ、翻弄するがままなのだ。
確かに、これは誰が訳しても、こんな風にしかならない。
だから、こんなヴェルレーヌしか想像できないわね。
でも、
お役所が認可する少年少女向けの詩集群で、
その範囲内だけで
ヴェルレーヌという人を語るのはやめてちょうだい。
ヴェルレーヌとは、どんな男だったのか
もっともっと感じさせる詩がある事すら知らないでしょう?
TRIOLET A UNE VERTUE POUR S'EXUSER DU PEU
( 短小を弁明する男らしい勇気のための八行詩 )
REDDITION
( 降伏 )
MILLE TRE
( 1,003人 )
MONTE SUR MOI COMME UNE FEMME
( 女みたいに乗ってくれ )
UN PEU DE MERDE
( 少しばかりの糞 )
LE SONNET DU TROU DU CUL
( 尻の穴のソネット )
こういう詩の中にこそ、
ヴェルレーヌ、その人物を解くものがあるのよ。
タランティーノのキル・ビルを見て
不自然さを感じない日本人がいるの?
なぜ感じるの、日本を知ってるからでしょう?
不自然さや違和感を感じる人には、
それなりの理由があるのよ。
貴方がヴェルレーヌをもっと知れば、
あんな、ディカプリオ扮するランボー如きに・・・、
貪欲に、傲慢に、淫蕩の限りを尽くしたヴェルレーヌが
あんな、ディカプリオ扮する小僧如きに惹かれるか、
もう少しまともな判断が出来るようになるから・・・。