熱烈な恋人も、眉のきびしい大学者も
分別すぎた年ともなれば、等しく猫族を愛する
わが家の誇りとも言うべき肥ってやさしい猫族を
彼等と等しく寒がりで引っ込み思案の猫族を
もろもろの学と悦楽との友である彼等、
猫族は、暗闇への恐怖と沈黙とを探し求める
地獄の王エレボスは柩引く馬の代わりにもしただろう
もしも彼等が誇りを捨てて仕えようとしたならば
物思いに耽る時の、見るも気高いその姿は
人けない沙漠の中に身を横たえて、
果てしない夢想の中に昏々と眠り続けるスフィンクスか
豊かな腰には充ち満ちる、魔法の火花
そして微妙な砂のように、黄金の破片が
神秘な瞳をおぼろげな星と煌めかせて
・・・・・・・・・・「 猫族 」 ( 福永武彦 訳 )
シャルル・ボードレール ( Charles‐Pierre Baudelaire )
1821年 4月 9日 パリで生まれ、
中学時代からロマン派の詩に傾倒して詩作を開始する。
1845年
ドラクロワを称讃した最初の著書『一八四五年のサロン』を著わし、
時代の絵画的課題を深く自覚的にとらえた尖鋭な美術評論家として世に出る。
1847年
バルザックの影響下に小説『ラ・ファンファルロ』を発表し、
翌年から米国の詩人エドガー・アラン・ポーの翻訳を開始するが、
この仕事は彼の詩学だけでなく、
のちの象徴主義の詩人たちに大きな影響を与えることになる。
1848年
二月革命では深く政治的活動に関わるものの、
積極的に社会的参画を企てるのは生涯でこの時に限られる。
1857年
近代韻文詩史上の最高傑作『悪の華』を上梓するが、
公衆道徳紊乱の科で断罪され、
第二版が刊行されるのはその4年後である。
『悪の華』以後、
彼は自分の生きる時代の特異性(現代性)を詩に取り込むことを望み、
散文による詩篇の制作に全力を注ぐ。
『パリの憂鬱』の刊行は死後の全集においてだが,
この詩集はやがて現代詩への「絶対の始まり」(ジョルジュ・ブラン)を
画する作品と評価される。
1864年
経済的困窮解決のためにベルギーに赴く
1866年
ナミュールの教会で転倒して脳障害の症状が生じ・・・、
1867年8月31日パリで死去。
ボードレールや日夏耿之介には、遠く及ばない私だけど、
いい加減・・・、そろそろ仕上げなければ・・・。
エドガー・アラン・ポーの詩『大鴉』・・・四重奏
3月 19日の日記分、ずっと工事中状態でしたが、
週末には、仕上げてアップ致します。
このシリーズの仕上げのご要望メールを下さった方々、
あともう少し、お待ち下さい。