ハッチ(鋼鉄の民族ヒッタイト) 9
遠くザグロス山中のカッシュ人とともにバビロンを挟撃し、神々を持ちかえったという初代ムルシリの偉業はどうやって計画され、実行されたのか。 カッシュ人(カッシートとも呼ばれる)というのは、今のイランあたりに居た。何千キロも彼方の遠い種族なのである。印欧語族だったというので、ネシュリやルウイであれば言葉は通じたであろうが、何とも壮大な大遠征を、ハッチもカッシュも、双方ともの種族がやったものである。 バビロンを撃破してのち、カッシュ人はバビロンに貴族として納まって経営に乗りだし、現地で喧嘩にならぬよう、ハッチは神々と略奪品を持ちかえったのである。 彼らクシュとカッシュ、双方はもともと兄弟種族であった可能性がある。クシュはカッシュかもしれないということである。 そしてまつろわぬ民ガシュガシュも、実は疑わしい。彼らは遊牧の野蛮人であるとされている。 ガシュカもまた、野生のカッシュ、移動してきたクシュシャラのお仲間ではないのか? トウドウハリヤシュ3世の時代は、初期帝国のハッチが衰退し、ガシュガシュ族の跳梁にも怯えるような時代である。 高山の中腹であるハットウシャ城の近辺にまで、その脅威はやってくる。 秋の実りを取りこみたいので、敵が居ない間に何とかならんか、といったような切実な記述さえある。 この情勢を突然に覆したシュッピルリウマとは何者か。清泉からの男と記されているそうである。 サパルルの出だという記述があるし、ハッチでは異民族だった。しかし維新の中興に尽した功績は計り知れない。 小生は、彼の正体を、ミタンニ系のマルヤンニ(武士)ではなかっただろうかと疑っている。 明かにハッチでは異種族だとして記されている彼が王宮に入り、そしてトウドウハリヤシュ3世の養子となり、更には帝国を再興する大王となったいきさつは何なのか。 そして最も面白そうな場面は、その大王シュッピルリウマが、上下エジプトのツタンカーメン王の妻、未だ二十歳前のアンケセンアメンから、切実な手紙をもらう場面だろう。 夫はなくなってしまいました・・・後継はいません、という例の手紙である。 臣下の毒牙にかかるまえに、数多いあなたの息子を婿にほしいと。 **ジャーマンアイリスは巨大だった。