事前宣伝 かぐやひめ幻想 10-4
歴代の倭国王が、中国の政権から得ていた待遇や称号を思い出していただきたい。 漢の時代に委奴国がもらった金印などを。この読みは、いどこく、だと思うんだが。 この蛇鋳の金印とか、のちの倭国の六国諸軍事うんぬんと称される将軍職のそれらは、小さな列島辺境の支配者にふさわしいもの、ではない。 北九州の委奴国など、現実は、銅印でも、与えるのがもったいないほどの弱小勢力に過ぎなかった。 弱小勢力であることは、中国側も知っていたのである。いつも献上品より下賜品の方が立派だったことでも、わかる。 これは、その弱小勢力の背後に眠っているものの巨大さを、恐れていたから。 眠っているこれを、敵対者として復活させてはならないことが、わかっていたのである。 だから金印を与えて有頂天にさせて、操った。 今回は、新羅を使って、これを随所で分断しようとしていた。 事前工作は、未だ百済占領下にある係争地域から始まった。 金春秋倭国に赴く、とある記述が、それである。 多羅を地盤にする倭人である金春秋は、列島に渡ったのではない。 列島に渡ったのは、金ユシンの妹の、宝姫、つまりかぐやひめの方である。 金春秋は、百済占領下にある多羅に潜入。 百済側に寝返ることで生き残っていた旧知の豪族たちと密かに出会い、工作して回ったのである。 出身地だから、諸般の事情には詳しい。遠縁の親戚がいっぱい、いたのである。 新羅が唐と、正式に同盟したことを伝えただろう。 いずれ反攻するさいには、多羅の人々が悲惨なことにならないよう、糧秣をネタに、新羅側に寝返るよう薦めた。 また、阿羅地方で宝姫が行っている総動員を告げた。 百済の軍政下での悲惨な食糧事情を察するので、列島へ遠征に出すその部隊に、食い詰めた者を出すように薦めた。 これには多羅の人々が、国を挙げて応じてきた。百済軍の支配から逃げ出してきたのである。 百済とは言葉も通じるし同族が多いので、本当は百済とは戦いたくない。 しかし扶桑への遠征であるのなら、それで飢えがしのげるのなら、加わってもいい。 むべなるかな