通常、妊娠末期には循環血液量が増大している。それだからこそ、お産での出血に耐えられるのだ。私も帝王切開の麻酔を担当しているとき、羊水込みで1500グラムくらいの出血量であればあわてない。輸血をしなければ死ぬかも知れないと考えることもない。さらに出血が続けば別だが。
以下に引用する毎日と共同通信の記事から分かることは以下の通り。
1)患者は31歳の大柄な女性。
2)医師は経験を積んだベテラン。
3)出産に際し、1600グラムを超える出血があった。
4)大量出血を疑わせる頻脈などの症状はなかった。
警察は1600cc(実際はグラムで量っていると思う)が致死量だと言うが、医療の現場で輸液をしている状態では、産婦でなくても致死量とは言えないだろう。道路で刺されての1600ccの出血であれば致死量と言えるかも知れないが。
産婦は出血に強いのだから、お産に伴って1600ccの出血があったくらいで失血死するとは思えない。頻脈もなかったことから、出血性ショックというのもありそうもない。羊水塞栓症や、深部静脈血栓が飛んだ肺塞栓症だという方が説得力を感じる。
死因の特定は、誰がどのようにしたのだろう。解剖はされているのだろうか。
30代が大量出血死 業過致死容疑、産婦人科医を書類送検
記事:毎日新聞社【2007年7月5日】
医療ミス:30代が大量出血死 業過致死容疑、産婦人科医を書類送検 --福岡県警
出産時に適切な輸血措置を怠り、女性を死亡させたとして、福岡県警は5日、北九州市八幡西区のセントマザー産婦人科医院の男性勤務医(56)を業務上過失致死容疑で福岡地検小倉支部に書類送検した。医師は「脈拍に異常はなく、女性が大量出血した認識もなかった」と容疑を否認している。
調べでは、医師は昨年4月5日、陣痛のため緊急入院した同市内の女性(当時31歳)が男児を出産した際、大量に出血し、放置すれば死亡する危険性があったのに緊急性が低いと判断、輸血など必要な措置を取らずに女性を死亡させた疑い。
女性はその後心肺停止状態になり、別の病院に搬送されたが同日、出血性ショックで死亡した。女性は「致死量に至る」(県警)1600CC以上の出血があったという。医師は勤続30年以上のベテランだった。
同医院の田中温院長は「故人と家族に申し訳ないことをした」と謝罪する一方、「医師が適切な措置を講じなかったというのは間違いだ」と述べた。【川名壮志、入江直樹】
産婦人科医を書類送検 北九州、出産後に出血死 (1)
記事:共同通信社【2007年7月5日】
福岡県警捜査1課と折尾署は5日、出産後の女性に適切な処置を行わず出血性ショックで死亡させたとして、業務上過失致死容疑で北九州市八幡西区のセントマザー産婦人科医院に勤務する男性医師(56)を書類送検した。
男性医師は「大量出血の認識はなかった。脈拍などにも異常はみられず、過失には当たらない」と容疑を否認しているという。
セントマザー産婦人科は高度な不妊治療を行う専門病院として知られ、患者は全国から訪れている。
調べでは、医師は同医院に当直医として勤務中だった昨年4月5日、北九州市若松区の会社事務員の女性=当時(31)=の出産を担当。午前6時半すぎの出産後、容体を軽視して直ちに出血量などを把握しなかった上、適切な処置も行わず、同日午前9時45分ごろ、転送先の病院で出血性ショックで死亡させた疑い。
女性は出産後に容体が急変したが、医師は女性のそばを離れ院内の電話で鎮痛剤の投与などを看護師に指示。転送直前まで輸血をしなかったという。県警はこうした措置の遅れが死亡につながったと判断した。
県警によると、男性医師は1976年に医師免許を取得したベテランで、これまでに約4000件の出産に立ち会っている。関西の病院などを経て、2003年から同医院に勤務している。
予測不能な状況 セントマザー産婦人科医院院長の話 (2)
記事:共同通信社
【2007年7月5日】
セントマザー産婦人科医院の田中温(たなか・あつし)院長の話 医師は出血を受ける防水シーツの交換を見ておらず、通常の出血量だと思っていた。女性の体格が大きかったこともあり、(大量出血による死亡は)予測不能な状況で、刑事責任を問われるのはおかしい。
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