緊迫した状況での治療を、後から誰が見ても文句の付け所がないほど完璧にこなし、なおかつ、完璧に記載することなど出来ない。そもそも医療に誰から見ても正解というものはない。医師が100人いれば、厳密に言えば100通りの考え方があるものだ。結果が悪かったとき、後から難癖を付ける余地は必ずあるのだ。その難癖を認めてしまえば、病院で人が死ぬたびに賠償責任が発生してしまう。そして、病院とは、人が死ぬ場所なのだ。
700万円支払いで和解へ 岐阜・大垣病院の投薬ミス
記事:共同通信社 【2007年8月28日】
岐阜県の大垣市民病院で1992年に死亡した男性=当時(78)=の遺族が、死亡は医師らの投薬ミスが原因として同市に約1億円の損害賠償を求めていた訴訟で、同市は27日、700万円を支払い和解すると発表した。9月の議会で賠償に関する議案の可決を受け、支払う予定。
大垣市によると、和解は7月末に名古屋高裁が勧告していた。血圧を測らずに狭心症治療薬を投与するなど、病院側の過失を一部認めた内容で、同病院は「再発防止に努める」としている。
男性は92年11月に腎疾患で入院。同年12月31日に高熱を出し、投薬治療を受けたが同日死亡した。95年10月に遺族が提訴。2005年7月の1審岐阜地裁判決では病院側が勝訴し、遺族側が控訴していた。
大垣市民病院損賠訴訟:700万円支払いで和解 投薬でのミス、否定できず /岐阜
記事:毎日新聞社 【2007年8月28日】
大垣市民病院は27日、腎不全などで92年に入院し、死亡した市内の70代の男性に薬を投与した際に、用法や用量にミスがあったなどとして、遺族に解決金700万円を支払うことで和解したと発表した。市議会の議決を得て支払う。
同病院によると、男性は92年11月10日に入院し、集中治療を受けたが原因不明の血小板減少症が続き、大量の輸血や対症療法を受けた。同年12月31日午後に38度の発熱があったため座薬を投与。その後、狭心症発作ではないかとみてニトロペン(ニトログリセリン)を投与したが、男性は同日深夜に死亡した。
遺族は95年10月、薬の投与に問題があったなどとして、1億195万4915円の損害賠償を求めて岐阜地裁に提訴。05年7月に原告の請求棄却の判決があり、遺族は同年8月、名古屋高裁に控訴した。先月25日、高裁から▽薬の投与やその前後の患者の身体状況の把握に何らかの過失があったのではないか▽死亡後13年以上経過している--として和解勧告があったという。
病院は▽座薬の投与量が高齢者には多すぎたほか、効能に解熱の記載がなかった▽ニトロペン投与の前に血圧を測定しなかった--など瑕疵(かし)があったことを否定できないとして和解を受け入れた。【子林光和】
男性の78歳と言えば平均寿命だ。平均寿命に達した人が、原因不明の重体となり、かなり濃厚な治療を受けたが、結局は助からなかったと言うことだろう。何が問題なのだろうか。
そもそも瑕疵があったことを否定できなかったら賠償責任があるのだろうか。実際に瑕疵があり、それが死亡の原因と高い蓋然性を持って推察できるとき、賠償責任が生じるのではないのだろうか。
否定できなかったらいつでも賠償させられるおそれのある社会、そんな社会は恐ろしくて嫌だ。