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カテゴリ:医療
私の勤務先でも、ご多分に漏れず医師の逃散が続いている。その理由の一つが当直だ。眠れずに次の日も仕事をする、いわゆる32時間連続勤務がつらいと言うこともあるだろう。でも、本当につらいのは、救急医としての訓練も無しに救急医療をさせられることのようだ。
日本の救急医療は、実際には行政が病院に頼み込んで行われている。きちんとした体制を整えた病院が申請して救急指定病院の許可を受ける建前になってはいるが、実際には建前だけで、救急病院等を定める省令を満たす施設はほとんど無い。特に第1条の1の「救急医療について相当の知識及び経験を有する医師が常時診療に従事していること」と言うのは、ごく一部の施設を除いて実現不可能だ。 多くの施設では、救急医療は救急医療の訓練を受けていない各科の医師が行っている。眼科医や耳鼻科医と言った、いわゆるマイナー科の医師が行うこともあるだろう。あるいは経験不足の、後期研修医が行うこともあるかも知れない。そうでもしなければ回らないのだ。建前通りの医師をそろえることは不可能なので、それを強制するのであれば、救急医療をやめるほか無い。 もう医師は救急医療を辞めたくて仕方がない。でも、病院自体は行政と事を構えるわけにはいかない。行政の要請とは、様々な縛りの結果、実質的には強制なのだ。病院当局は何とかなだめすかして当直という名の実質夜勤を維持しようとしているが、専門外の誤診を責められるようでは、もう逃げるしかないだろう。 以下の記事の事例は、結果として誤診であったわけであるが、もちろん実際に非があるかどうかは詳細が分からないので何とも言えない。単に正確な診断が付けられないと非難される実例だと思って欲しい。 「不完全検査が死亡原因」 栗林病院のミスと賠償命令 救急医や循環器の専門家が診ていれば、おそらく診断の付いた症例なのだろう。でも、それらの専門医を常時そろえることは不可能だ。実現不可能な質を求めるのなら、もう、救急医療をやめるほか無い。不完全な救急医療でもあった方が良いのか、全く無くなってしまった方が良いのか、どちらを選びますか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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