都賀川の水難事故は、改めて自然の脅威を思い知らされる出来事だった。今では行方不明だった男性の遺体も発見され、計5名の方が亡くなった。ご冥福をお祈りいたします。
不幸なニュースの中でも、一つだけ救いだったのは、指導員らの責任を問う声が挙がらなかったこと。想定外の異常な事態だったことが誰の目にも明らかだったからだろう。わかりにくい事態であれば、また業務上過失致死での取り調べと、メディアによるバッシングがが待っていたかも知れない。
何しろ10分間に1メートル以上の水位の上昇で、しかも急流と来ている。大の大人の男性作業員ですら逃げ出せなかったのであるから、子供連れの指導員は良くやった方なのだろう。
川遊び襲った鉄砲水、ひざ下の水一気に1m以上…神戸
7月28日22時43分配信 読売新聞
六甲山系の急傾斜を流れ落ちてきた濁流が、水辺にいた子どもらをのみこんでいった。
28日午後、神戸市灘区の都賀川(とががわ)で発生した〈鉄砲水〉が4人の命を奪った。普段は子どもたちのひざ下ほどしかない水かさが、突然襲った集中豪雨のために、わずか10分で1メートル以上も増え、凶暴な流れに変わった。猛暑の中、涼を求めた楽しい夏休みのひとときが暗転した。
関係者らによると、民営の「六甲学童保育所どんぐりクラブ」(同市灘区)に通う小学1~6年の児童19人はこの日午後1時半ごろから、女性指導員ら3人に引率され、河川敷の公園で川遊びをしていた。
1時間後、雷と雨がひどくなったため、子どもたちは都賀川に架かる橋の下の遊歩道に移動して雨宿り。さらに雨が激しくなり、水かさがみるみる増えていった。指導員らは、遊歩道から上がるよう、子どもたちを走らせたが間に合わず、最後は子どもたちを放り投げるようにして避難させた。
しかし、亡くなった神戸市立六甲小6年、河合玲緒(れお)さん(12)と同4年、泉谷(いずたに)瑠希也(るきや)君(10)、女性指導員(47)ら5人が、押し寄せてきた流れに落ちた。指導員らは自力ではい上がるなどしたが、河合さんら2人の行方が分からなくなった。
泉谷君が濁流にのまれる瞬間を見た小3女児(9)の父親(36)は、「娘は『瑠希也君の手を必死で握っていたけど、手が離れてしまった』と泣いていた」と唇をかんだ。
一方、同川の別の場所で流され、亡くなった友地(ともじ)こころちゃん(5)が通う大石保育園の松岡千恵子園長(60)によると、この日は塾に行くためふだんより早い午後2時半ごろ、迎えに来た母親の妹の妻鹿愛美(つましかまなみ)さん(29)と手をつなぎ、体操服姿で園を出た。
松岡園長は「驚いているとしか言葉がでません」と絶句した。
また、新都賀川橋では、耐震補強工事をしていた4人のうち現場責任者の男性(49)が増水した川に取り残された。橋脚にしがみついていた男性は、市消防局員らの降ろした縄ばしごにつかまり、同3時15分ごろ、救助された。男性は「急激に流れが速くなり、逃げられなかった」と話した。
最終更新:7月28日22時43分
もちろんこの教訓を生かして、警報機の設置など、何らかの防災対策を講じる必要はあるだろう。誰かを罰することより、同じことを起こさないことが大切なのだ。