刑事免責の話になると、どうしても色々と言いたいことがありすぎてまとまりそうもありません。今回は欲張らずに一点に絞って書くことにしました。私の元々の考えは、
医療に限らず事故が起きたとき、真相究明と再発防止を何より優先すべきで、処罰感情を抑えて刑事免責を確保すべしと言うものですが、今回はそれも封印します。
救急医療事故:医師の刑事免責を検討 患者側から反発も--自民私案
自民党は29日、救急救命に関係した医療事故について、事故を起こした医師らの刑事責任を免除する刑法改正の検討を始めた。党の「医療紛争処理のあり方検討会」で、座長の大村秀章衆院議員が私案として示した。免責の範囲などを今後議論するとしているが、患者側から反発も出ている。
医師らは、通常の医療行為で患者が死亡したり障害が残った場合は罰せられないが、必要な注意を怠ったと判断されれば業務上過失致死傷罪が適用される。医療界から「刑事罰は医療の萎縮(いしゅく)を招く」との批判も出ていた。
座長私案は、刑法の業過致死傷罪の条文に「救急救命医療で人を死傷させた時は、情状により刑を免除する」との特例を加える。厚生労働省が導入を計画する死因究明の第三者機関「医療安全調査委員会」の設置法案とセットで、議員立法による改正を目指す。
医療安全調査委の検討会委員で、小児救急の誤診を受け息子を亡くした豊田郁子さん(40)は「まず免責ありきという考えはおかしい」と指摘している。【清水健二、石川淳一】
毎日新聞 2008年7月30日 東京朝刊
今回は
「人を死傷させた時」に絞って書こうと思います。故意や誰もしないような馬鹿な過失で「人を死傷させた」のであれば、刑事免責にしろと言う医師はほとんどいないでしょう。でも、治療の甲斐もなく亡くなることはありますし、正しい診断が困難な事例もあります。後からなら「ああすれば良かった、こうしたら良かった」と言うことは可能ですが、最近は「れば・たら」で過失認定される恐れが大きくなってきました。その様な
不適切な過失認定をそのままにして、「人を死傷させた悪い奴だけど情状酌量で許してあげよう」と言われても嬉しくありません。
誰でも犯しやすいミスを防ぐためのチェック体制や重大な結果を招かないためのフェイルセイフ機構、ミスを誘発しやすい労働環境の改善など、医療安全のための方策はいろいろあります。人は誰でもミスを犯すものですが、金をかけて対策を取れば、重大な結果を減らすことは可能です。そのためのコストを不可能にしている
医療行政そのものに刑事罰を与えるような、そんな法改正を私は望みます。それなら患者側も反発しないでしょう。するのかな。