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医療報道を斬る

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2009.04.29
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カテゴリ:医療
 人質事件とは、人質の生命を楯に無法な要求をすることです。実際にこのような事件が起きれば、人質の生命の安全に配慮しつつも、犯人逮捕にも全力で努力します。けれども、ひたすら無法な要求に屈するばかりで、誰も事件を解決しようとしない事例があります。人質も、要求を受け入れるよと言うばかりで、犯人を逮捕しろとはいいません。その事例とは、医療です。

 多くの病院で、時間外の救急医療を担っているのは宿日直医です。でも、厚生労働省労働基準局によれば、宿日直医の仕事内容は、以下の通りです。

労働基準法における宿日直勤務は、夜間休日において、電話対応、火災予防などのための巡視、非常事態が発生した時の連絡などにあたることをさす。

医療機関において、労働基準法における宿日直勤務として許可される業務は、常態としてほとんど労働する必要がない業務のみであり、病室の定時巡回や少数の要注意患者の検脈、検温等の軽度または短時間の業務に限る。

夜間に十分な睡眠時間が確保されなければならない。

宿直勤務は、週1回、日直勤務は月1回を限度とすること。

宿日直勤務中に通常の労働が頻繁に行われる場合は、宿日直勤務で対応することはできず、交代制を導入するなど体制を見直す必要がある。


 医師にとって医療とは通常の労働ですから、救急医療を受け入れている病院で、宿日直医が救急医療を行うことは無理だと言うことが分かります。時間外に救急医療を行うのであれば、休日夜間にフルタイムで働ける人員を割り当てる必要があります。でも、実際には宿日直医に救急医療を丸投げにするような無法状態がまかり通っています。義務がないからと言って診療を断れば、患者の命が失われます。日本の救急医療は、まさに人質事件なのです。

 この事件の実行犯は病院の開設者ですが、彼らも好きでやっているわけではありません。そのようにしないと病院の存続がかなわないのです。黒幕は、そのような診療報酬体系を定めた国でしょう。

 このような医療体制に疑問を持つ医師は多いのですが、最近積極的に司法に問う医師も出てきました。法律的には医師の言い分は当然のことですから、以下のような判決となります。

産科医訴訟:宿直割増賃金の支払い認める 奈良地裁

 奈良県立奈良病院(奈良市平松)の産婦人科医2人が、夜間や土曜休日の宿日直勤務に対し低額の手当ですませるのは違法として、04、05年の割増賃金など計約9230万円を支払うよう求めた訴訟の判決が22日、奈良地裁であった。坂倉充信裁判長は、県に時効分などを除く計約1540万円の支払いを命じた。医師の宿日直勤務を時間外労働と認めた初の判断とみられる。

 判決などによると、同病院は県内外からハイリスクの妊婦らを24時間受け入れている。原告は04、05年に1カ月当たり6~12回の宿日直勤務をした。勤務時間は宿直が午後5時15分から翌日午前8時半、日直が土曜休日の午前8時半から午後5時15分だが、その前後も恒常的に勤務が続いていた。県は1回2万円の手当を支給した。

 判決は原告らの宿日直勤務が「分娩(ぶんべん)の回数も少なくなく帝王切開も含まれる。救急医療もまれではない」として労働基準法上、割増賃金を払わなくてよい「断続的労働」とは認めなかった。割増賃金の根拠となる労働時間について「待機時間も労働から離れることが保障されているとはいえない」と宿日直開始から終了までが労働時間に当たると認めた。

 原告側は、自宅で待機する「宅直」も労働時間に含めるよう主張したが、判決は「病院の指揮命令下にあったとは認められない」として請求を退けた。【高瀬浩平、阿部亮介】

毎日新聞 2009年4月22日 22時23分(最終更新 4月22日 23時43分)


病院での宿日直の総てが労働時間だとすれば、時間外勤務手当だけの問題ではなく、労務管理の問題でもあります。過労死レベルの勤務状態を放置することは犯罪です。この判決を尊重するとすれば、少なくとも、救急医療は崩壊するでしょう。

 今回は宅直は勤務時間と認められませんでしたが、それも病院からの命令ではなかったと認定されたからです。自主的に決めることをせず、病院から命令されなければ宅直をしないとなれば、救急医療だけでなく、病院の機能の多くが失われるでしょう。

 この判決が出たからと言って、多くの病院の労働条件が変わることはないでしょう。変えたくても変えるだけの原資がありません。医師の数も予算も圧倒的に足りないのです。変えるくらいなら、病院をたたむ方を選ぶでしょう。医師もそれを知っているので、この判決を受けて訴訟を乱発することはないでしょう。なぜなら、患者の命を人質に取られているからです。

 たとえ一時的に多くの命が失われるとしても、まともな医療を構築するためには、いちど完全に医療を崩壊させるべきだとの意見もあります。でも、そこまで簡単に割り切れる医師は少ないのではないでしょうか。だとしても、疲れ果て、モチベーションの下がった医師は今までのようには働きません。積極的に医療を崩壊させるような行動を取らなくても、今のような医療政策を取る限り、崩壊は免れないと思います。
 





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Last updated  2009.04.29 16:31:26
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