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医療報道を斬る

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2009.05.01
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カテゴリ:医療
つづきです
          東京大学医科学研究所
         先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門
          上 昌広


 医療を安全にするためにはお金がかかりますが、わが国の医療安全対策への投資が極度に不足していることがわかります。では、どうやって資金を確保すべきでしょうか?どの程度の金額を、誰が負担するか、まさにこれが問題です。ところが、この問題は、これまで議論されてきませんでした。

 ところで、わが国の医療は、「プラスアルファの医療費を払いたい人も払ってはいけない」という不思議なルールを採用しているのはご存じでしょうか。もちろん社会保障として、政府が保障する医療保険は必要ですが、それに上乗せして払う一部の人がいれば、安全性向上という恩恵を全員が受けることができるでしょう。飛行機のビジネス・クラスをモデルに説明した社会システムデザイナー 横山禎徳氏の文章がわかりやすいのでご紹介します。(横山禎徳 現場からの医療改革推進協議会:「社会システム・デザイン・アプローチによる医療システム・デザイン」2)


(以下、引用)
 「システムにお金が入ってくるとどのような良循環が生まれるかということを考えるために、航空業界を例に取ってみましょう。「ビジネス・クラス」の発明が良循環を生んだのです。1970年代初頭の航空業界というのは最悪の状況でした。747などのジャンボ機が導入されましたが、集客に自信がなく、ディスカウントをすることに走り、各社ほとんど赤字の状況で、機材更新のための投資が出来そうにありませんでした。従って、飛んでいる飛行機の寿命が30年を超えるという状況になりそうでした。数年前、某航空会社の30年物の747が空中分解したように、やはり、30年を超えると安全性に問題があります。70年代の航空業界は大変
なことになるという予測でした。ところが、70年代の半ばから後半にかけて航空業界は「ビジネス・クラス」という画期的なサービスを発明しました。

 これは、フル・フェアを払ってくれる企業が相手です。個人のように安く飛びたいから「ちょっとまけてよ」とはあまり言いません。料金をサービスの質に応じて定価どおり払ってくれます。航空業はお客が定価どおりに払ってくれれば儲かります。個人客の多いエコノミー・クラスはほとんどディスカウントしているから儲からないのです。企業相手であればフル・フェアであるということです。そこがミソであって、だから「ビジネス・クラス」と言ったわけです。

 これは、予想以上に当たって、急速に航空業界は潤いました。そのおかげで最新鋭機の開発が進みました。すなわち、第四世代の機材と言っていますが、767、777、747-400、737-700、737-800と続々ボーイング社から出てきました。エアバスも最初のA300というのはそうではないのですが、エアバス320、319、330、340を含めて全部が第四世代の機材です。

 皆さんご承知ではないと思いますが、驚くべきことに2000年から今日(2007年11月)まで先進国のエアラインにおいて第四世代の飛行機での死亡事故はテロ以外、今の所ゼロです。その位安全性が保たれています。確かに機材破損事故は結構あります。この間も、先進国かどうかの定義の問題はありますが、台湾の中華航空の737-800が燃えましたが、あれも死亡者ゼロです。だから、やはりお金がシステムに入ってくると安全性が高まるのだということです。

 貧乏人は古い飛行機に乗りなさい、「ビジネス・クラス」の客以上は最新鋭の飛行機に乗せますということはありません。当たり前のことですが、そういう差別はできないし、ないのです。747-400というのは非常に安全性の高い機材なのですが、ファースト・クラスやビジネス・クラスの客だけではなくエコノミー・クラスの客も、安売りチケットの客も含めてどんなタイプの客でも皆乗っています。全く同じような意味で、医療システムの中にお金が入って来て、みんなが潤うという良循環を作り出すことが大事なのです。

 医療システムにお金が入るということは結局、年寄りも若者も、貧乏人もお金
持ちも全部含めて皆が得をするのだと発想すべきです。」
(引用終わる)


 では、なぜ厚労省は、プラスアルファの医療費を払いたい人までも、払うことを禁止するのでしょうか。それは、病院が自らの努力で収入を得る道を閉ざして、赤字ぎりぎりの状態にしておいたほうが、厚労省にとって有利だからです。病院は生き残るために必死で補助金収入を得ようとしますから、厚労官僚が作る補助金事業に無批判に従ってくれます。補助金は規制と表裏一体ですから、官僚はたやすく権限を拡大することができます。まるで、官僚が権限拡大するために、国民・患者を危険にさらしているかのような構造です。官僚が、この構造を意識しているか否かは別として、彼らの置かれた立場を考えれば合理的な対応です。国民への情報公開が不十分な官僚統制では、しばしば起こる事態のようです。おそらく旧ソ連や東欧の末期は同じような状況だったのでしょう。

 厚労省は、さらに不可解なことに、医療機関が自らの努力で、患者が払う金額を軽減することも禁止しています。4月15日、札幌のNPO法人と歯科医院が連携し、患者の診療費の窓口負担分を実質無料にしていることは、患者本人にも医療費を負担するよう求めている健康保険法に違反しているとして、厚労省が監査に入ったと報じられました(共同通信)。今後、保険医療機関の指定取り消しなどに踏み切る可能性もある(読売新聞)とのことですが、そうなれば保険を使うことができなくなり、患者にとっても医院にとっても致命的な打撃を受けます。
なぜ厚労省は、患者負担分の割引を禁止するのでしょうか。周囲の医療機関の経営を圧迫するからでしょうか。

 ちなみに、厚労省は民間病院には税金投入しませんが、厚労省管轄の国立病院・ナショナルセンターには、税金によって赤字補てんすることが当然のように行われています。ちなみに、このような施設には役人が出向したり、天下ります。

 厚労官僚の権限拡大のために医療費本体を削減しているという構造が見えてきましたが、厚労省へ予算を配分している財務官僚は何をしているのでしょうか。財務官僚は、現場の意見を聞くのではなく、厚労官僚の説明だけを長年聞いてきたため、「医療費亡国論」の考え方に騙されてしまっているのでしょう。医療費はコストでしかないから削減すべきだという考えに染められてしまい、医療に付加価値を見出し付加的に支払いたい人もいることや、それによって患者全員が恩恵を受けるという発想は、思いもよらないことなのでしょうか。


【 患者の安全性向上のため病院の人件費増加が必要 】

 危険にさらされている患者の安全性を向上させるためには、病院コメディカルの雇用を大幅に増やす必要があることは明白です。

 4月2日、政府・与党が「地域医療再生計画」を策定し、1兆円規模の基金を創設すると報じられました(共同通信)。もし、この1兆円を基金としてではなく、医療者が患者を診療することへの対価として、つまり診療報酬として支払えば、年収400万円としてのべ25万人・年のコメディカルの雇用を増やすことができます。しかし厚労省は、なぜこの予算を診療報酬ではなく基金にしようとするのでしょうか。基金を作っても、これまで通り「給与は雇用関係にある医療機関が払うべきものであり、国が払うべきではない」という理屈を貫くでしょうから、病院のコメディカル雇用は全く増えないでしょう。そのかわり、あまり役に立たなそうなプロジェクトが立ち上がり、天下りポストが増えるでしょう。これは、過去に何回も繰り返し、そのたびに失敗してきたことです。

 患者の安全を守るためには、与党が厚労官僚に絵を描いてもらうばかりではな
く、民主主義に基づく政治主導のリーダーシップが必要な時が来ているのかもし
れません。







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Last updated  2009.05.01 12:31:13
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