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カテゴリ:医療
医師の書くブログであっても、何時でも医療側の味方をするつもりはありません。本当に医師に許されない過失があったのであれば、批判することにためらいはありません。問題は、報道からだけでは許されない過失なのかどうか分からないことです。
延岡病院で死亡の遺族、宮崎県に3630万円求め提訴「医療措置怠った」 記事のすべてを疑っていたのではきりがありませんから、以下のことは事実と仮定します。 1)「腹部を強く打っているので、きちんとみてほしい」と延岡病院に転送 2)男性は腹部の痛みを訴え続けたが、当時の外科部長は「おなかの手術は必要ない」と判断 3)小腸の4カ所が断裂 1)にもかかわらず、まともに腹部の診察をしなかったのであれば論外ですが、さすがにそんなことはないでしょう。触診をして、腹部X線単純写真くらいは撮ったのでしょう。おそらくは腹壁は固くはなく、筋性防御が認められない状態で、X線写真でも遊離ガス像が認められなかったのだと思います。場合によっては、CTを撮っても診断が付かなかったのかも知れません。「遊離ガスを認めない消化管穿孔症例の検討」 という特集が消化器外科学会で組まれるくらいですから、そう珍しいことではないのでしょう。 リンク先の右側の「プレビュー」というところをクリックすると、抄録が読めます。199番には、シートベルトによる腸管破裂7例の全例に遊離ガスが見られなかったと記されています。上記の学会は、記事の事例の起きた年の2月に開かれています。このような特集が組まれたのは、見逃される腸管損傷が多かったからでしょう。 この記事の事例が避けられた誤診なのかどうかは分かりません。診断が困難な消化管損傷があることは事実でしょうし、自分の診断を常に疑い続けることで、最終的に誤診を免れることがあるのも事実です。担当した医師が聞く耳を持たずに最初の診断に固執したのであれば、私の印象もクロですが、何度も検討したけれども腹部外傷の所見がなかったのであれば、私としてはシロと言いたいと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.05.18 23:43:08
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