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医療報道を斬る

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2009.06.08
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カテゴリ:医療
 手抜きをするわけではありませんが、またもやMRICメールマガジンからの全文引用です。新型インフルエンザに対する水際作戦の誤りについては私も言及しましたが、同じ思いを抱いている医師は少なくないと思います。それなのに、なぜ厚労省は方向転換できなかったのか。よく判る解説です。2回に分けて転載させて頂きます。

▽新型インフルエンザ騒動の舞台裏▽ 


        東京大学医科学研究所
        先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門
        上昌広

※今回の記事は村上龍氏が主宰する Japan Mail MediaJMMで配信した文面を加筆
修正しました。

         2009年6月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
                 http://medg.jp

 我が国をパニックに陥れた新型インフルエンザ騒動も、ここに来て落ち着きを
見せ始めています。5月28日には神戸市の矢田立郎市長が「安心宣言」を出し、
30日には騒動の発端となった兵庫県立神戸高校、兵庫高校で授業が再開されまし
た。また、主要五大新聞に掲載された記事数(地方版も含む)は、5月17日の週
の7872件から、24日の週には3533件と半減しています。

 一方、5月28日には参議院予算委員会で新型インフルエンザの集中審議が行わ
れ、政府の対応が批判されました。これまで議論されていない多くの問題がある
ようです。今後、様々なところで新型インフルエンザ騒動が総括されていく必要
があるでしょう。


【通知を濫発した厚労省】

 4月28日、WHOは、新型インフルエンザの継続的な人から人への感染がみられる
状態になったとして、パンデミック警報レベルをフェーズ4に引き上げました。
それ以降、厚労省は、かねてより作成していた「行動計画」と「ガイドライン」
に従い、成田空港等で大規模な検疫を開始するとともに、都道府県や医療現場に、
多くの通知や事務連絡を驚異的なスピードで出し続けました。その一部は厚労省
のHPで公開されています
(http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei.html)。その中に
は、症例定義(PCR実施基準)、外来の取り扱い、入退院基準、確定診断など、
事細かな内容が含まれており、厚労省が医療現場の箸の上げ下ろしまで指示して
いるが分かります。

 このような行政指導を通じ、厚労省は司令塔としての役目を果たそうとした訳
ですが、その指示は現場の実態と乖離していたため、医療現場は大混乱に陥りま
した。知人の開業医は、「新型インフルエンザ自体より、厚労省の対応に振り回
され、医療スタッフは疲弊してしまった」と語っています。

 特に、PCRに関する通知は医療現場に甚大な影響を与えました。この通知によ
り、PCRを受ける患者は、メキシコ・北米への渡航歴があり、簡易診断キットでA
型陽性となった人に限定されたため、多くの患者が適切に診断されず、国内での
蔓延を発見するのが遅れてしまったのです。現に、5月8日に国内で最初に診断さ
れたのは、厚労省のルールに従わず、渡航歴がないのにPCRを受けた患者ですし、
国立感染症研究所は、4月下旬には国内に新型インフルエンザが進入していた可
能性が高いと報告しています。医療現場でPCRを行う第一義は、厚労省が公衆衛
生データを取るためではなく、患者の治療なのです。この点に関し、厚労省と医
療現場には大きな乖離があったように思います。

 また、「行動計画」に従って、全国の病院に約800カ所の「発熱外来」が急遽
作られました。そして、厚労省は「新型インフルエンザの患者は発熱外来へ、そ
れ以外の患者は一般医療機関へ」と指示しました。しかしながら、これは机上の
空論です。なぜなら、全ての患者は新型インフルエンザか否か分からない状態で
病院を訪れるからです。つまり、全国すべての医療機関が、新型インフルエンザ
かもしれない患者が来ることを想定した準備をしなければならないのです。とこ
ろが厚労省は、発熱外来以外の一般医療機関には、その準備のための物資・予算
を渡しませんでした。これでは、「発熱外来」など名前だけで実態の伴わないも
のになってしまいます。この姿勢は、食糧も物資も補給しないが戦闘命令だけは
出す、旧日本陸軍の参謀本部を彷彿とさせます。参謀本部は、ロジスティックを
軽視して、多数の兵士を無駄死にさせました。余談ですが、「発熱外来」は諸外
国にはありません。

 本来、医療とは、患者と医師が十分に相談し、状況に応じて柔軟に対応すべき
ものです。第三者である厚労省が、行政指導を通じて介入すべきではありません。
そんなことをすれば、治療が手遅れになったり、過剰になったりして、患者・医
師は大きな負担を強いられます。まさに、前述の開業医のコメントの通りです。
ちなみに、日本感染症学会は5/21に「一般医療機関における対応は(厚労省ガイ
ドラインとは)当然異なって然るべき」と緊急提言しています。厚労省の行政指
導を見るに見かねたのでしょう。


【予算が足りない!】

 では本来、厚労省に求められている役割とは何でしょうか? それは、医師の
判断を封じ込めるルールを作ることではなく、医療機関が新型インフルエンザに
対応できるだけの予算・物資・人員を供給することだと考えます。現場の医師が
「この患者にはPCRが必要だ」と判断したとき、それを実現できるだけの体制を
用意するべきでした。長年の医療費削減政策によって、日本の病院の73%(う
ち自治体病院の91%)は赤字ですから、必要な物資を購入したり、雇用する余
力はありません。

 ところが厚労省には、この問題に取り組んだ形跡が全くありません。新型イン
フルエンザ対策(発熱外来設置など)に使える医療機関の整備予算は、平成20年
度の補正予算と平成21年度予算を合わせて、38億円です。これでは感染予防のた
めの、個室を整備できません。また、発熱相談など、国民への情報開示に至って
は、わずか5000万円です。これでは十分な新型インフルエンザ対策ができるはず
がありません。

 5月28日の参議院・予算委員会で、民主党の鈴木寛議員は、新型インフルエン
ザ対策充実のため、医療体制の整備やPCR検査体制拡充について質問しました。
鈴木議員は、「国内感染の発見の遅れは、PCR法による検査が渡航歴のある人に
限られていたことが一因。PCR法での検査は、1日当たり全国で約1000人分しかで
きる体制にない。今後、予想される第二波などに備えて、検査体制を充実させる
べきではないか」と主張しましたが、厚労省の上田博三・健康局長からは具体的
な回答は得られませんでした。新型インフルエンザの診断体制の予算は、全て併
せて7.5億円で、絶対的に不足しています。

 鈴木議員は、新型インフルエンザ対策として約800億円の新規の予算確保を求
めましたが、麻生太郎総理大臣は、「2009年度補正予算を組み替えたり、新たな
補正予算を組む予定はない」と答弁しました。新型インフルエンザ対策は、補正
予算の最大の目玉になるべきテーマですが、麻生総理の答弁には呆れるばかりで
す。

 ちなみに、米国のオバマ大統領は4月29日に新型インフルエンザ対策として、
議会に15億ドルの予算を求めました。あまりにも対照的です。
 


つづく





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Last updated  2009.06.08 18:03:23
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