残念ではありますが、手術には一定の確率で合併症が起こります。消化管の手術では、縫合不全はよく見られる合併症です。特に胃全摘では、張力がかかりやすいなどの理由で、他の部分の吻合(消化管をつなぐこと)よりも縫合不全が起きやすいのです。
このような想定内のことが起きたときにミスと言われるのは納得できないでしょう。賠償金ではなく解決金だと言われても、金を払うような事態だとは、医師なら誰でも思わないでしょう。
でも、多くの外科医にとっては他人事のようで、状態の悪い患者の手術を強行したがるケースはまれではありません。そういう外科医は、こんな記事は読まないのでしょうね。
県が解決金支払い和解へ がんセンター医療ミス訴訟
共同通信
栃木県立がんセンターで、1999年に胃がんの手術を受けた男性=当時(57)=が死亡したのは術後の誤った処置が原因として、遺族が県に約6240万円の損害賠償を求めた訴訟で5日、県が宇都宮地裁(竹内民生(たけうち・たみお)裁判長)の提示した解決金を支払うことで遺族側と合意した。
遺族側代理人によると、提示額は500万~600万円。代理人は「県の説明では、県議会を通して金額が決まる。提示額の範囲内になる見込みだ」と話した。県は「協議中でありコメントは差し控える」としている。
訴状によると、男性は99年8月に同センターで胃の全摘出や腸と食道をつなぐ手術を受けたが、術後の縫合不全により出血が止まらなくなり、輸血を繰り返し行ったことで肝不全になり死亡した。