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2009.12.14
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カテゴリ:医療
 川崎協同病院の「延命治療中止」の有罪が確定しました。何で括弧付きかというと、私は延命中止ではなく、やはり殺人だと思っていたから。その根拠は筋弛緩剤の使用。元気な人を殺す毒薬を使うのは治療の中止などではなく、積極的な殺人だという判断です。でも、これは表面的な見方でした。

延命治療中止、有罪確定へ 医師の免責、要件示さず 最高裁が上告棄却 川崎協同病院事件 【1】
09/12/09 記事:共同通信社

 川崎市の川崎協同病院で1998年、昏睡(こんすい)状態の男性患者=当時(58)=が気管内チューブを抜かれ、筋弛緩(しかん)剤を投与され死亡した事件で、殺人罪に問われた医師須田セツ子(すだ・せつこ)被告(55)の上告に対し、最高裁第3小法廷は9日までに「法的に許されない」として棄却する決定をした。懲役1年6月、執行猶予3年とした二審東京高裁判決が確定する。

 医師による終末期の延命治療中止の違法性が刑事裁判で争われたのは異例で、最高裁が判断を示したのは初めて。医師の免責要件などへの言及はなかった。

 決定は7日付。5人の裁判官全員一致の意見だった。

 田原睦夫(たはら・むつお)裁判長は「必要な検査をせず、回復可能性や余命を的確に判断できる状況でなかった。回復をあきらめ、チューブの抜管を要請した家族も病状の適切な情報が伝えられておらず、抜管は男性本人の推定される意思ともいえない。法律上許される治療中止に当たらない」と判断。筋弛緩剤投与と併せて殺人罪の成立を認めた高裁判決を支持した。

 被告側は「男性の意思を推定できる家族の強い要請に基づき、チューブを抜いた。法律上許される」と、無罪を主張していた。

 決定などによると、男性は98年11月2日、気管支ぜんそくの発作による低酸素性脳損傷で入院。意識不明となり、被告は同16日、家族の要請で気管内チューブを抜いたところ、男性が苦しむ様子を見せたため看護師に筋弛緩剤を注射させ、死亡させた。

 一審横浜地裁は「回復可能性があり、本人の意思表示も家族の要請もなかった」と判断、懲役3年、執行猶予5年とし、二審は「家族の要請はあったが男性の意思表示はなく、死期も切迫していなかった」と判断した。


 これだけ読むと、抜管して苦しんでいるかのような体動が見られたので筋弛緩剤を使ったようですが、判決文 (pdf)を読むと、事はそう単純ではなさそうです。

 家族からの強い要請で抜管したら、そのまま無呼吸ですぐに亡くなると思いきや、苦しみだしたので複数の鎮静薬を投与、でも、無効だった。他の医師に相談したら筋弛緩剤を使うよう示唆された。そこで筋弛緩剤を使用した。これが事実認定の内容のようです。たぶんここはその通りなのでしょう。一方で、脳波無しには予後の判定は不能であるかのような判断がありますが、これは法的脳死判定との混同じゃないでしょうか。

 筋弛緩剤の使用は、言わばとどめを刺す行為ですから、(現状では)法的に許されないことに異存はありません。でも、家族や相談に乗った医師には何のお咎めもなく、何故ひとりの医師だけが訴追を受けるのでしょうか。主治医に罪を問うのなら、他の関係者にも何らかの罪を問うのが筋だと思います。(そうしろと言っているわけではありません)

 判決では抜管自体にも違法性を認めています。限りある医療資源を有効利用するためには、死が免れない状況で、単なる延命のために濃厚治療をすることは避けるべきです。でも、刑事罰の恐れがあるのであれば、濃厚治療を続ける他はありません。

 やはり立法機関や司法機関がきちんと基準を作り、現場にそれを示すべきです。何の基準も示さず判断を現場に丸投げし、後出しで、事例ごとに判断が変わる裁判で裁かれるようでは、現場は安心して仕事が出来ません。





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Last updated  2009.12.14 05:42:58
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