手術の際にある程度の出血が見込まれ、輸血の必要が予想されれば輸血用血液を準備します。輸血することが予想されなければ準備をしません。大病院であれば、輸血用血液を準備して実際には使わなくても無駄にはなりません。他に輸血を必要としている患者が居るからです。でも、開業医であれば、準備した血液を使わなければ捨てるほかありません。単に経済的に損をするだけでなく、献血してくれた人の善意をも無駄にすることになります。
輸血準備ない中絶手術で死亡…医師を書類送検へ
2010年4月15日 提供:読売新聞
静岡市清水区の女性(当時45歳)が2005年、同区内の産婦人科医院(閉院)で受けた中絶手術の前処置がきっかけで死亡する事故があり、静岡県警は、必要な輸血の準備をしなかったことが死亡につながったとして、執刀した60歳代の男性院長と妻の医師を業務上過失致死容疑で静岡地検に書類送検する方針を固めた。
中絶手術の死亡で医師が刑事責任を問われるのは異例。
捜査関係者などによると、女性は05年9月に同医院で中絶手術の前処置として子宮を拡張する手術を受けた際、院長らは器具で子宮周辺を傷つけた。子宮の全摘出手術をしたが、輸血の準備を怠ったため、女性が大量出血を起こしたのに対応できず、女性を失血死させた疑いがもたれている。
女性の遺族は、院長を相手取り約9300万円の損害賠償を求めて08年2月に静岡地裁に提訴(係争中)。09年9月に業務上過失致死容疑で院長を県警に刑事告訴した。告訴状では、子宮の全摘出手術にあたり、〈1〉出血を防止する義務を怠った〈2〉輸血の準備を怠った〈3〉全摘出手術を行う前に総合病院に転院させるべきだった--などと指摘。県警は第三者の医師にも意見を求め、輸血の準備を怠ったことのみについて責任を問うことにした。
院長は読売新聞の取材に対し、「コメントできない」としている。
具体的な経過が分からないので、何とも言いようがない部分はあるのですが、中絶手術自体は大量出血を来すような手術ではありませんから、何らかの原因で子宮全摘術を決意した時点で既に大量出血をしていたのでしょうか。通常、子宮全摘術そのもので輸血が必要となることは希ですから。また、輸血の準備だけが問われていると言うことは、大出血自体の責任は問題にされていないと言うことですね。
このような記事が一人歩きをし、手術中の突発的な大出血の際に輸血の準備がないことで刑事罰を問われることが常態となれば、輸血用血液がいくらあっても足りないでしょうね。輸血を準備する立場としては、どうしたら良いんだろう。